写真とエビデンスで歯種別に学ぶ!歯内療法に生かす根管解剖
3/6

5ザーとなる歯科医師がきちんと治療するか,抜歯されるまでこれが続く.このため,再治療では複雑な形態の根管が多くなるはずで,成功率はますます低くなる. このことを説明するような興味深いデータがある.Wadaら1(1998)は難治性根尖性歯周炎に対して,逆根管治療あるいは意図的再植を行い,切除した根尖を透明標本にした.その結果,根尖分岐出現率は70%であった.図4は,根管形態を調べた代表的な論文に記載された全歯種の側枝・根尖分岐出現率である.ざっと見て,根尖分岐より側枝のほうが出現率は高い.側枝出現率は多い部位で50~60%,根尖分岐に限ると,ほとんどの歯・歯根で30%以下である.Wadaら1(1998)の根尖分岐出現率70%というのはきわめて高い数値であることがわかる.側枝・根尖分岐のない歯は治癒し,側枝・根尖分岐を有する歯が難治性根尖性歯周炎として残っていくことが読み取れる. 再根管治療に複雑な根管が多く含まれることは,これまであまり指摘されてこなかった.「抜去歯で見られる形態を臨床的に把握することはできない」というのが常識であった.歯科用小照射野エックス線CT(CBCT)と歯科用顕微鏡は,このような根管形態を臨床的に扱うための有力なツールである(図5,6).現代的な歯科医学が始まって100年あまりだと思うが,近年になって初めて,複雑な根管形態を扱えるようになってきたといえる. 本書では「根管形態は複雑だから治療できない」というのではなく,「どのようにアプローチすれば,どこまで治療できるのか」という観点で根管形態を考えてみたい.2019年4月吉日吉岡隆知CBCTと歯科用顕微鏡で根管形態がより臨床的に!図5,6 CBCTと歯科用顕微鏡により,複雑な根管形態を扱えるようになってきた.ただし,どの機器でもよいわけではなく,適応機種は限られる.撮影画像を調整し,最適な条件で観察しなければならない.図のCBCTはVeraview X800(モリタ),歯科用顕微鏡はOPMI PROergo(白水貿易,ジーシー).56参考文献1.Wada M, Takase T, Nakanuma K, Arisue K, Nagahama F, Yamazaki M. Clinical study of refractory apical periodontitis treated by apicec-tomy. Part 1. Root canal morphology of resected apex. Int Endod J 1998;31(1):53‐56.2.Vertucci FJ. Root canal anatomy of the human permanent teeth. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1984;58(5):589‐599.3.葭内純史,高橋和人,横地千仭.真空注入法による歯髄腔の形態学的研究.歯基礎誌 1972;14:156‐185.4.Sert S, Bayirli GS. Evaluation of the root canal congurations of the mandibular and maxillary permanent teeth by gender in the Turkish population. J Endod 2004;30(6):391‐398.序

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る