写真とエビデンスで歯種別に学ぶ!歯内療法に生かす根管解剖
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26抜去下顎大臼歯にインジェクション法で根管充填したデンタルエックス線写真図2-1a 下顎大臼歯にインジェクション法で根管充填したデンタルエックス線写真.左:正放線撮影,右:偏近心撮影.図2-1b aの歯を硝酸で溶解後,残ったガッタパーチャ.M:主根管,I:イスマス,F:フィン,L:側枝.MMMIFFFL図1a図1b1.根管の基本形態 根管形態というと,一般的には細い管があって,小枝のように側枝があるイメージをもつ人が多いかもしれない.図2-1aは,インジェクション法で根管充填した抜去下顎大臼歯のデンタルエックス線写真である.3根管であることが確認できる.この歯を硝酸で溶解して残ったガッタパーチャが図2-1bである.近心根は独立した2根管ではなく,イスマスでつながった2根管であった.幅広い扁平な根管のなかで2箇所,ファイルの挿入可能なところがあって,それを広げたら根尖は同じところに到達したという形態であった.遠心根も1根管であるが,多量のフィンが見られた.この根管充填したガッタパーチャは,Hessのゴム標本のようなものである.根管形成や根管洗浄の知見が蓄積されたわれわれは,このガッタパーチャが正確に根管形態を反映していないことを知っている.歯髄残渣や切削片が狭いところに入り込み,ガッタパーチャの侵入を妨げている.空間があっても,ガッタパーチャの流動性で細い側枝などには入っていかない.根管に何らかの材料を注入して観察する根管鋳造法や透明標本の限界である. 根管にかかわる名称を表2-1にまとめ,根管の各部の名称を図2-2,図2-3内左に示す.根管は主根管と側枝に分けられ,側枝には管外側枝,管間側枝,根尖分岐がある.ほかに複根歯髄床底に発生する髄管もあるが,出現頻度は低い1.図2-1bと比べると,フィンやイスマスがないことがわかるだろう.初期の根管形態の研究には,フィンやイスマスという用語は出てこない. 根管はもともと,扁平な形態と考えるべきである.扁平な根管の中で,ファイルが通った部位が主根管と見なされる(図2-3).根管形成により,器具が触れなかった部分がフィンやイスマスである.イスマスは2つの主根管に挟まれた部分,フィンは主根管の外側にある部分である.側枝は根管形成により取り残される(図2-4).根尖分岐は,微細であれば根管形成に取り込まれて消失するかもしれないし(図2-3内右),側枝のように残るかもしれない(図2-4〜7). イスマスやフィンは,可能ならば歯科用顕微鏡下で器具を挿入して処置しなければならない.そこが根管口の入り口のこともよくある.しかし,側枝や根尖分岐を非外科的根管治療で意図して処置するこ写真とエビデンスで歯種別に学ぶ! 歯内療法に生かす根管解剖

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