プリアジャステッドアプライアンスの治療とモニタリング
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 Andrewsは,1989年に書籍「ストレートワイヤーアプライアンス」を上梓した.Andrewsの研究は,5つの研究課題を積み上げたものであり(図2-2-1),1960年に開始された「矯正歯科治療後の咬合の分析・評価」「自然に生じた最適な咬合の収集」「最適な咬合120例の歯冠計測」「最適な咬合のための6つの鍵の発見」「自然に生じた最適な咬合と矯正歯科治療後の咬合の比較」からなっている.これらは一連の研究として計画されていたのではなく,Andrewsには研究を開始した当初ストレートワイヤーアプライアンスを開発する意図がなかった1).第一の研究: 最初の調査だった「矯正歯科治療後の咬合の分析・評価」では,矯正歯科医の治療例を観察した.その結果,矯正歯科治療後の咬合は前歯にローテーションがなく,上下顎大臼歯のClassⅠ関係を示していたものの,治療後の咬合の特徴に一貫性がみられなかった.さらに個々の矯正歯科医により治療後の咬合に大きなばらつきがあった.こうしてAndrewsは,自然に生じた最適な咬合を収集し,その特徴に矯正歯科治療のゴールが見いだせるという仮説をもつに至った.第二の研究: 「自然に生じた最適な咬合の収集」で,1988年までの間に収集した自然に生じた最適な咬合模型について120例を精選した.口腔模型を収集するための選択規準は,矯正歯科治療を受けていないこと,歯がよく排列していて外観の好ましいもの,優れた咬合をもっていると見えるもの,矯正歯科治療を受けても利益のないものであった.1Andrewsの5つの研究課題28 Andrewsは,歯冠と歯根尖を結ぶ歯軸ではなく,臨床歯冠の唇・頰側面とその中点に接する臨床歯冠軸を指標として,唇・頰側面と咬合面との関係を数量的に定義した.歯の唇・頰側の臨床歯冠における最大発育隆線上の軸として臨床歯冠軸を設定し,歯冠の咬合面側と歯肉側の中点であるFAポイントをブラケット設計の規準とした.SWAブラケットは,FAポイントとブラケットベースの中点,ブラケットスロットの中央点が同じ平面上に位置づけられ,イン-アウトが反映されように設計された.IntroductionAndrewsのイノベーション2-2

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