プリアジャステッドアプライアンスの治療とモニタリング
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 上下顎歯列の咬合状態は,切歯,犬歯,大臼歯関係を近遠心的に評価して分類できる(⇒4-5参照).そこで切歯をi,犬歯をc,大臼歯をmとし,そのあとにClassⅠは1,ClassⅡを2,ClassⅢを3と表記する(表4-1-1).これらの組み合わせは27のカテゴリーとなり,ClassⅠ不正咬合がi1c1m1,ClassⅡ div.1 がi2c2m2,ClassⅡ div.2が i1c2m2,ClassⅢがi3c3m3のようにコード化できる.1.Class I 不正咬合(i1c1m1) 叢生症例は,歯の大きさの問題が口腔内環境に適応していると考えると,前歯部に著しい叢生があれば第一選択は抜歯法であると判断できる.非抜歯治療では,第三大臼歯を抜去した上で,第二大臼歯から順番に側方歯をすべて遠心移動する必要があるので,治療が長期となる(図4-1-1).1上下顎歯の近遠心的関係によるカテゴリー分類表4-1-1 カテゴリー分類記号表切歯犬歯第一大臼歯Class Ii1c1m1Class IIi2c2m2Class IIIi3c3m394 絡んだ紐を解くには順序だった手順が必要である.不正咬合の治療においても,どのような手順で治療ゴールを達成するかのアルゴリズムが必要になる.それはもっとも少ない手順で王将を詰める詰め将棋に例えることができる.自身の駒を動かしながら相手の反応を予測して次の手を打つ.常に最善手でなければならない.駒は歯であり相手の王将が動けない状態となって詰みとなる.このときの順番がアルゴリズムである.アルゴリズムは無数の二者択一からなる巨大なディシジョンツリーで,計算し問題解決して決定に至るために秩序立てた一連のステップをいう1).治療アルゴリズムを正常に稼動させるには入力する情報を一つひとつ確認し,あるべきところにカテゴリー分けしておく2).臨床でもっとも重要となるのは,切歯部の叢生やオーバージェットの是正のために犬歯を遠心移動させるときのアルゴリズムである.つまり矯正歯科治療のアルゴリズムの要点は抜歯判定にある.切歯の咬合関係を是正するためにどの歯を抜去して,犬歯をどこまで遠心移動しなければならないかを考え,同時に大臼歯関係のClassⅠ関係を達成するための最適解を求めることである.Introduction4-1治療ゴールに至るアルゴリズム

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