アスリートも歯がいのち!
1/4

4 トップアスリートのみならず、部活生や一般アスリートの健康管理において、むし歯の存在は栄養管理以前の大問題と思います。この本には、その問題を解決すべく、太田武雄先生がトップアスリートの歯科サポートで培った貴重な経験が凝縮しています。 「まえがき」にもあるとおり、太田先生がバレーボール日本代表の歯科サポートをはじめたきっかけは、私が海外遠征中にむし歯で食事ができない選手を目の当たりにし、先生に相談したことでした。そして太田先生の活動を見て、歯科サポートの重要性をあらためて痛感しました。 当時パパさんバレーボールの仲間だった太田先生は、私の頼みに快く応じ、今も手弁当で選手たちへの歯科健診やレクチャーを続けてくれています。治療の選択肢や予防のアドバイスなど、忙しく厳しい練習日程をこなす選手たちに合ったやり方で面倒をみてくださるので、先生を慕う選手は多く、トップ選手の口腔環境は大きく改善して、健康への意識も高くなりました。現在は、大学生日本代表をはじめジュニア選手(とその保護者)を対象とした歯科指導へと広がりを見せています。 運動に必要なエネルギーの入口である歯や口の健康管理は、運動能力を最大限に発揮するために必須です。スポーツを楽しみながら、マンガを交えた本書でちょっと勉強してみてください。アスリートも歯がいのちです!! ランニングや筋トレで汗をかくと、口がカラカラになります。じつはこのとき、一時的にではありますが、お口のなかが唾液分泌障害の病気を患っているのとほぼ同じ状態になっていることをご存知でしょうか。 唾液が不足すると、唾液による抗菌作用、再石灰化作用(むし歯になりかけの歯を修復する働き)が働きません。むし歯菌や歯周病菌が繁殖しやすく、むし歯の修復もうまくいかなくなって、歯の病気のリスクが非常に高まった状態なのです。 また、水分補給では、お腹がダボダボにならないよう、みなさんスポーツドリンクをチョビチョビ飲みしますよね。すると、しょっちゅう糖をもらえるむし歯菌は大喜び。しかもスポーツドリンクの酸は歯を溶かします。その歯をトレーニングで強く噛みしめると歯の損傷も起きやすく、アスリートの歯を取り巻く環境は非常に過酷です。 しかしむし歯や歯周病は、日頃の生活習慣によって徐々に進行する病気。弱点を知り対策を講じれば、生活習慣病と同じく未病で過ごすことができます。若く元気なかたは歯で困った経験が少なく、つい後回しにしがちかもしれません。でも人生は長いです。ぜひこの本でご自分のお口に起こりうることを知ってください。そしてご自分の歯の弱点を歯医者さんであらかじめ教えてもらって対策を講じ、未病で過ごしていただきたいと思います。推薦の言葉林 光俊Mitsutoshi Hayashi田上順次Junji Tagami医学博士、杏林大学病院整形外科スポーツ外来担当。日本オリンピック委員会強化スタッフ。トップアスリートの傷害治療と予防、リハビリが専門。日本代表男子バレーボールのチームドクターとして6度のオリンピックにチャレンジ。自身も中学から社会人までバレーボールをたしなんだ無類のスポーツ好き。東京医科歯科大学副学長、同大学大学院医歯学総合研究科う蝕制御学分野教授。最先端の研究と臨床で、むし歯の予防とできるだけ歯を削らず長持ちする修復治療をリードする。日本歯科保存学会、日本接着歯学会ほかの学会長を歴任。TV・雑誌でも活躍。

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る