アスリートも歯がいのち!
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5推薦の言葉 陸上競技はとてもベーシックな競技です。走るという能力自体は、本来私たちみなに備わっているものだからです。 それでは、トップアスリートの走りは何が違うのでしょう。これには非常に細かな筋肉の動きが関わっていて、なかでも重要なのが重心とバランスです。 陸上の指導では一般的に、選手のからだのバランスデータは非常に重要視されますが、からだのバランスを支える「噛み合わせ」のチェックはほとんど行われていません。この本を読み、今後もっと注目すべきかもしれないと感じています。 子どもの頃から(矯正治療を受けるなどして)よい噛み合わせで育ち、バランスのよい骨格と筋肉の成長が促されれば、その人が本来もつ運動機能が妨げられずに発揮されるのはもちろん、健やかな人生への貢献も非常に大きいはずです。 また、むし歯のみならず、歯周病への注意も必要だなと気づかされました。アスリートは、からだが丈夫なイメージがありますが、実際にはトレーニングの疲れから抵抗力が落ちるので、感染症に弱く、歯ぐきも腫れやすいのです。こうしたことは、部活で頑張っている学生さんや市民ランナーのかたにも起こりうることですので、この本でアスリートならではのリスクを知って、日ごろの健康管理に役立てていただきたいです。 一読して、アスリートにとってとても重要なことが書かれていると思いました。 私が長年指導者として関わっているフィギュアスケートは、薄い刃に重心をかけて跳躍し回転する繊細な競技です。高い集中力が求められるため、ほんの些細な気がかりや違和感があるだけでも、十分に力が発揮できないことがあります。 当然、歯にトラブルをかかえていては、ベストの演技は期待できません。健康な奥歯でグッと噛みしめてこそ、からだの軸が安定し、ベストの演技ができるのですから。 そのためには、ふだんから歯科検診を受け、早めに治療を受けたり予防をしたりすることが大事ですね。 また、この本には、歯や口をケガしたときの対処法などがわかりやすく書かれています。歯に詳しくなくてもポイントが理解しやすいので、読んでおくといざというときに役に立つのではないでしょうか。 ベストの状態でリンクに立てるよう、選手には自己管理が不可欠だと指導していますが、歯についても同様ですね。 かつての教え子(小川勝/サラエボオリンピック、フィギュアスケート日本代表/本書の執筆協力者)が歯科医師である影響で、選手に「歯のトラブルは大丈夫か」と声をかけていましたが、これからはさらに積極的に声がけしていきたいと思います。苅部俊二Shunji Karube佐藤信夫Nobuo Sato法政大学スポーツ健康学部教授。1996年アトランタオリンピック男子4×400mリレー5位(現在、日本記録)、2000年シドニーオリンピック日本代表。日本陸上競技連盟強化・情報戦略部リレー部門主要メンバーとして、リオオリンピック男子4×100mリレーの銀メダル獲得に貢献。フィギュアスケートコーチ。1964年インスブルックオリンピック8位。1965年世界選手権4位。小塚崇彦、浅田真央らを指導。2010年に世界フィギュアスケート殿堂入り。著書に『諦めない力 フィギュアスケートから教えられたこと』(扶桑社)ほかがある。朝日新聞社提供

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