口腔外科ハンドマニュアル’19
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VISUAL SEMINAR : BASIC DENTAL AND ORAL SURGERYChapter1-1Chapter1 口腔外科ビジュアルセミナーSection1ビギナー&ミドルのための必修 ベーシックテクニック 口腔外科医にとって,抜歯は入門的手術であるがもっとも頻繁に行う手術でもある.小なりと言えども立派な手術であり,難易度もさまざまで,ときに偶発症を生じることがある1(図1).上顎歯の抜歯では,図2に示すような要因から思わぬ偶発症を生じる.本稿では,上顎洞穿孔,歯の上顎洞内迷入と周囲軟組織内迷入,口腔上顎洞瘻孔,上顎結節骨折,異常出血について述べる.上顎洞穿孔 エックス線写真で根尖が上顎洞に突出している場合,抜歯により上顎洞へ穿孔することがある.上顎臼歯根尖と上顎洞底との距離,洞内への歯根突出の頻度を示す2(表1).この突出頻度の順に穿孔を生じやすいと考えてよい.歯根と上顎洞の解剖学的な位置関係により避けられないこともあるので必ずしも偶発症とは言えない場合もあるが,穿孔が予想される場合(図3,4)は,術前にその可能性と穿孔時の対処法について説明をしておく.1)穿孔の確認 抜歯後に,根尖に骨が付着しているか否かを観察する.骨が付着していれば穿孔の可能性がある.穿孔の有無は,ブローイング(口を閉じて口腔内に呼気を溜め,鼻腔から空気が抜けるかどうかをみる)により判断する.鼻から自然に空気が漏れれば穿孔している.ただし,洞底骨に穿孔を生じていても上顎洞粘膜が厚く肥厚している場合や自然孔が閉鎖している場合には,鼻腔から空気が漏れないことがあるのでCTでの上顎洞粘膜の状態の評価が必要となることがある3.穿孔の有無確認のためにゾンデや鋭匙などの器具で探ることを勧める論もあるが,穿孔していないのにつついて穿孔を生じたり,口腔内の細菌を押し込んだりするので禁忌とする論もある4.2)対処 穿孔径の大きさと上顎洞炎の有無により対応が異なる.穿孔後は,閉鎖が確認できるまで強く鼻をかまない,喫煙しない,ストローで吸わないなどの指示をして,洞底部に強い圧力がかからないように注意させる.また継発症として口腔上顎洞瘻孔,上顎洞炎を生じることがあるので注意深く観察する.堀之内康文公立学校共済組合九州中央病院歯科口腔外科連絡先:〒815‐8588 福岡県福岡市南区塩原3‐23‐1Yasufumi HorinouchiDepartment of Oral and Maxillofacial Surgery, Kyushu Central Hospital of the Mutual Aid Association of Public School Teachersaddress:3-23-1 Shiobara, Minami-ku, Fukuoka-shi, Fukuoka 815-8588上顎歯抜歯時の偶発症とその対処法Prevention and Management of Complications in Maxillary Tooth ExtractionMovieスマホで動画が見られる!42,49頁(使い方:7頁参照)40

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