口腔外科ハンドマニュアル’19
5/6

VISUAL SEMINAR : ADVANCED ORAL AND MAXILLOFACIAL SURGERYChapter1-2Section2認定医・専門医をめざすエキスパートのための アドバンステクニックChapter1 口腔外科ビジュアルセミナー 骨粗鬆症の骨折予防や悪性腫瘍の骨転移,多発性骨髄腫における骨関連事象の治療を目的に,ビスフォスフォネートやデノスマブが第一選択薬として広く用いられるようになってきた.これらの薬剤は強力な骨吸収抑制作用を有するが,薬剤関連顎骨壊死(以下,MRONJ:Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw)の発症が問題となっている.MRONJに対して以前は洗浄や抗菌薬投与を中心とした保存療法が推奨されていたが,最近ではいくつかのシステマティックレビューにおいて外科療法の優位性が報告されるようになった1.筆者は2011年より一貫してMRONJに対して外科療法を第一選択としてきた2,3が,本稿では当科におけるMRONJの治療法について紹介する.MRONJの標準治療 2016年に発表された日本口腔外科学会等によるポジションペーパー4では,MRONJ治療の目標は病変の進展防止や症状の緩和とされている.ステージ2のMRONJに対する具体的な治療として抗菌薬洗口剤と抗菌薬の併用が推奨されており,難治例に対して複数の抗菌薬併用療法,長期抗菌薬療法,連続静注抗菌薬療法と並んで腐骨除去,壊死骨掻把,顎骨切除との記載がある.われわれは多施設共同後ろ向き研究により361例のMRONJ患者を収集し解析した結果,保存療法と比較して外科療法,とくに壊死骨+周囲骨切除のほうが有意に良好な治癒が得られることを明らかにした5.さらにその後患者数を増やし427例で検討してみたが,やはり骨粗鬆症患者,悪性腫瘍患者のいずれにおいても手術を行ったほうが早期に高い治癒率が得られ,壊死骨に加えて周囲骨も切除したほうが良好な結果を示した(図1,2).これらのことから,MRONJの標準治療は外科療法とするべきであり,手術が施行できない患者に対してのみ保存療法を適応することが望ましいと考えられる.MRONJの外科療法の実際 現時点で筆者が考えているMRONJ外科療法の原則について以下に記す.梅田正博長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔腫瘍治療学分野連絡先:〒852‐8588 長崎県長崎市坂本1‐7‐1Masahiro UmedaDepartment of Clinical Oral Oncology, Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciencesaddress:1-7-1 Sakamoto, Nagasaki-shi, Nagasaki 852-8588薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)への外科的対応Surgical Approach for Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw (MRONJ)105

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る