口腔外科ハンドマニュアル’19
6/6

薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)への外科的対応VISUAL SEMINAR : ADVANCED ORAL AND MAXILLOFACIAL SURGERYChapter1-2の存在の2者が独立した因子として抽出された.すなわちMRONJ手術を成功させるためには,まず骨溶解部を確実に切除することが重要であると思われた.縫合後の死腔をなくすために頬舌側の皮質骨を平坦に切除(=辺縁切除)し縫合することが望ましいが,病変が深く進展している場合,頬舌側の皮質骨を切除すると残存骨量が少なくなり病的骨折の危険性が考えられる.下顎管を超える深さまで骨溶解像がみられる場合は,下歯槽動静脈神経束を剥離温存しながら骨溶解部を完全に掻爬し,頬舌側の皮質骨は残存させても良好な治癒が得られることがわかった(図9).また,骨硬化部についても必ずしも切除しなくても治癒可能であることも明らかとなった. 一方,MRONJでは,ときに骨膜反応を認めることがある.骨膜反応は炎症性刺激に対する一種の反応性の病変と考えられたことや,骨膜反応部を切除範囲に含めると多くの場合区域切除が必要となることから,これまで骨膜反応部を無理に切除範囲に加えることは行ってこなかったが,骨膜反応をともなう患者では治癒率は低下することが明らかとなった(図10).骨膜反応をともなうMRONJの手術法については未解決の点も多く,今後の研究が必要である.5)上顎発症例における上顎洞炎の処理 上顎発症例では上顎洞炎の併発の頻度が高い.篩骨洞炎や前頭洞炎を併発している場合は内視鏡下副鼻腔手術(ESS:endoscopic sinus surgery)など耳鼻咽喉科的手術の施行も考慮するが,上顎洞炎のみの場合は必ずしも必要ではなく,上顎の壊死骨を完全に除去しMRONJを治癒させると上顎洞炎も治癒する(図11)(論文投稿中).6)骨膜反応をともなう患者の治療法 上にも述べたが骨膜反応をともなう患者では骨溶解部を完全に切除する範囲で手術を行っても治癒率は高くない(図10).骨膜反応の病態や臨床的意義に図9a〜c 下顎MRONJに対する手術の1例.前立腺がんにてゾメタ投与中.a:術前CT.b:術後CT.c:術中写真.下歯槽神経動静脈束(矢印)を温存しながら骨溶解部をすべて掻把している.残存骨の量が少なくなる部位では頬舌側の皮質骨はあえて残存させている.cba1.00.80.60.40.20治癒率骨膜反応なし(129例)骨膜反応あり(35例)p < 0.001(日)2,5002,0001,5001,0005000図10 骨膜反応と治癒率(Exten-sive surgeryを行った164例).109

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る