季節の中の診療室にて
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季節の中の診療室にて瀬戸内海に面したむし歯の少ない町の歯科医師の日常96職業 岡山駅から新幹線に乗車すると、新大阪駅までの時間が短いと感じることが多い。読書に熱中したり、到着間際にうっかり睡魔に襲われたりすると、危うく乗り過ごしそうになる。慌てて荷物を抱え、列車から飛び出したプラットホームでまずやることは、ポケットの外側を触りスマホの存在確認である。その日も新幹線の乗車口付近のいつもと同じ場所で、同じことをやっている自分の姿がなぜか滑稽に思えた。 苦笑いをしながら立ち止まりスマホの画面を確認すると、高校時代の友人の一人から、「今帰省しています。よろしければ連絡を」とのメールが入っていた。彼とは高校3年間同じクラスで、さらに浪人した1年間も机を並べたのだが、私が歯学部を再受験した30数年前の春に電話で会話を交わして以降、連絡を取り合うことはなくなっていた。彼は高校の同窓会にも一度も顔を見せず、米国に赴任しているという情報もあり、繋がりは見つけられずいた。 時々、疎遠になっていた昔の友人や知り合いとFacebookで繋がったという話

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