季節の中の診療室にて
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97職業……………………を耳にすることがあるが、彼との繋がりも数年前にそのパターンで復活した。思い出したようにFacebookに顔を出す彼の投稿と、私の投稿への稀な反応を見ながら、とにかく一度会おうと考えながら数年が経っていた。私はその場ですぐに「今大阪にいます。明日帰る予定なので後程連絡します」とメールを返した。 翌日帰宅するとすぐに電話をして、歯科診療所で待つことになった。それからしばらくすると、椿に囲まれた門扉の前で背伸びをしながら手を挙げる彼の顔が見えた。医局に案内すると「久しぶり」という言葉を合図に、長い時間をかけてこれまでの出来事や現在の状況などを、交互に語ることになった。彼は大学、大学院時代を東京で過ごし、関西に拠点を置く大手電機メーカーにエンジニアとして就職し、11年間は米国ニュージャージー州で過ごして、今年退職したことなどを語った。 少し会話が途切れた時、彼が「ずっと会ったら伝えなければいけないと思っていたことがある」と口を開いた。私は一瞬昔なにかやらかしたかのかと身構えた。彼は和らいだ表情で「浪越は覚えていないかもしれないが、高校2年の時だった。苦手だった物理の勉強法について尋ねると、物理は公式を理解して、それを覚え

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