食べる力を失わせない
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012に 認知機能 老化による食べる力の低下は、咀嚼や嚥下の問題だけではありません。認知症になると食欲の減退や食べる行動の異常(食行動異常)が影響し、脱水や低栄養をきたすことがあります。認知症には中核症状と周辺症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)があります(図1-1)。中核症状は必ずみられる症状で、記憶障害や見当識障害(時間や場所・人がわからなくなる)、実行機能障害、失行・失認・失語、理解力・判断力の低下などがみられます。一方、周辺症状は周囲の環境や人との関わりのなかで影響されるもので、暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠・昼夜逆転、幻覚・妄想、せん妄、徘徊がその代表で、このなかに食行動異常(異食・盗食・過食・拒食)も含まれます。 認知症そのものが口腔や咽頭機能に直接影響して誤嚥の原因となる確実な根拠はありませんが、認知症が進行すると、計画的に一連の行動を行うことができなくなる実行機能障害や注意力・食物認知機能の低下により食べる行動を円滑に遂行できなくなる傾向がみら中核症状●記憶障害●見当識障害●実行機能障害●失行・失認・失語●理解・判断力障害周辺症状(BPSD)暴言・暴力興奮抑うつ不眠・昼夜逆転幻覚・妄想せん妄徘徊食行動異常図1-1 中核症状と周辺症状本文と図表の間は

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