ジルコニアモノリシックレストレーションコンプリートブック
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80Part 1-製作ステップにおける勘どころを知ろう 対比効果を利用した色調表現執筆:都築優治はじめに ここでは、対比効果を利用した色調再現方法について解説したい。まず、モノリシックジルコニアへのステイニング作業は、通常のオールセラミックス修復同様に支台歯色の環境や目標歯の色調を考慮しながら透明度を選択する必要がある。ただ、いかに高透過型のジルコニアであってもガラスセラミックスのように澄んだ高い透光性を実現できているわけではなく、エナメル質とは大きく異なる屈折率を保有するため過剰に支台歯色の影響を考慮するものではないように感じている。共通して言えることは、①母材の透明度、②ステイン材の発色、③表層の質感、にそれぞれ留意しながら操作する必要があるということである。これらはすべてが色調再現性に関連する事項であり、ステイニングの効果を引き出す重要なファクターとなる。図1 天然歯の色調サンプル。右側中切歯の色層構造をイラストに起こしてみたい。図2 エナメル質内部に隠されている色層を取り出した状態。再現技法にかかわらず、色調再現にはいかにこれらの色層を把握できるかが重要である。また、三次元的にどのように重なり合い色調が構成されているのかを理解しなければならない。図3 天然歯の色層は、透明層と不透明層の絶妙なグラデーションによって構成されている。左図Light Reflectorは光の反射を促す不透明層で、右図Light Absorberは光の透過が見られる透明層となる。また、それぞれが重なり合うエリアは、不透明層と透明層が交わり半透明層の状態へと近づいていく。これらの色層分布のイメージは、ステインによるキャラクタライズや、色を塗り重ねる順序の参考として役立つ。天然歯の色層分析 高い不透明度をもつジルコニアは、基本明度をエクスターナルステインで大幅に調整することは非常に困難だと考える。そのため、モノリシックレストレーションにおけるジルコニアの選択は慎重に行わなければならない。また技術的なアプローチとしては、下地の不透明度を活かしながら擬似的な透明感を表現したり、彩度の強弱を与え、色の対比効果(コントラスト)を操作したりすることによって色層の深みを演出する。色調表現を行う上で、まずは目標歯の色層を的確に捉える必要があり、そこから色の濃淡を加えることで対比効果が生まれる。ここで、天然歯の色層の捉え方を簡単に紹介する。Chapter 5 エクスターナルステインの勘どころ

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