決定版 実践マニュアル歯科用CTの見かた・読みかた
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歯科用CBCTとCTの放射線被ばくに関する基本的な考え方Ⅱ歯科用CBCTと放射線被ばくについて 2018年6月8日に厚生労働省の「医療放射線の適正管理に関する検討会」は,厚生労働省令を改正し,医療機関の管理者が確保する安全管理体制の1つに「医療放射線に係る安全管理」を加えることを了承したという報道がなされました. 今後,歯科用CBCTを保有する歯科医院でも管理者のもと,①放射線に関する安全管理責任者を配置し,②安全管理のための指針策定,③医療放射線に関する安全管理の職員研修の実施,④医療被ばくの線量管理・線量記録などについて,放射線被ばくから職員を守るための研修を実施しなければならない可能性があります.また安全管理責任者に就けるものとして医師,歯科医師,診療放射線技師が想定されます. 日本は他国に比べて医療用CTの普及率がかなり高く,医療被ばくが多い国です.医療被ばくとは疾患を持つ患者が検査や治療で受ける放射線被ばくを表します.2004年に「The Lancet」という医療界では権威のある雑誌に「CTの普及率における影響に関する論文」が掲載されました.内容は日本が他国よりCTの保有率が顕著で,そのため医療被ばくによる発がんのリスクが有意に高いというものです1.また歯科用CBCTの歯科医院における普及率がCTの普及率を超えているという報告もありました2. 上記のことから日本国内におけるCT保有率はさらに増加していることが予想されます.しかし患者に対して正確な診断を行い,適切に治療を施すことが最も有益であることは明白です.したがって,歯科診療に歯科用CBCTを応用し,正確な診断を行っていくことは患者のために非常に大切なことです.ただし,放射線に対する正確な知識なしにむやみにエックス線検査を行うことは避けなければなりません.そこで以下,歯科用CBCTを含め歯科診療を行うために知っておくべき放射線に関する内容を解説していきます.1.自然放射線と人工放射線a.自然放射線 約46億年前に地球が誕生してから現在まで,この世界に放射線が存在しなかった時期はありません(図1).宇宙からは宇宙線と呼ばれる陽子を中心とする高エネルギーの放射線が常に降り注いでいます. 宇宙線が大気中の原子と相互作用してさまざまな二次放射線が作られます.さらに地球上にはウラン化合物をはじめとした放射性物質が数多くみられ,それらを含んだ建築物などからも放射線が放出されています.その結果,大気中にはラドンガスが含まれ,呼吸を通して肺に送り込まれます.カリウムの一部は放射性物質である質量数が40のものがみられ,食品として体内に取り込まれます.つまり人は生活Ⅰ放射線被ばくに関して予想される研修宇宙からの放射線(0.3 mSv)食品(0.99 mSv)建物のラドンなど(0.48 mSv)大地(0.33 mSv)図1 自然放射線.自然放射線には宇宙線,ウラン化合物,ラドンガス,食品が含まれ,われわれは日常生活においてもそれらにより被ばくしている.環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)」の数値を引用.12

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