決定版 実践マニュアル歯科用CTの見かた・読みかた
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決定版 実践マニュアル 歯科用CTの見かた・読みかたの有無が挙げられます.とくに逆生の場合は鼻腔または軟口蓋方向に位置するものがあるため注意が必要です2.したがって,過剰埋伏歯と歯の萌出異常に対する評価が小児歯科関連疾患として歯科用CBCTの有効性を示すことのできる代表例と考えられます. 歯科用CBCTを用いることにより,歯の萌出状態を三次元的に表現することが可能で,立体的に捉えるうえではきわめて有効性が高いと言えます.歯科用CBCT画像より,過剰埋伏歯と近接する歯や正常構造物との関係を非常に詳細に評価することが可能となります. 具体的には,上顎正中過剰埋伏歯の頬舌方向の位置関係,形態,歯根の形成状態,萌出状態を評価できます.次に,過剰埋伏歯と近接する上顎中切歯,側切歯との接触状態,場合によっては歯根の消失状態も評価できます.もちろん,上顎中切歯や側切歯の形態,歯根の形成状態も正確に評価することができます.さらに正中過剰埋伏歯と切歯管との関係,鼻腔との位置関係,加えて上顎洞との位置関係も評価できる場合があります4. たとえば,症例1の図7-1aのパノラマエックス線画像からは,上顎右側中切歯部に逆生の過剰埋伏歯が認められますが,その具体的な位置は明らかではありません.図7-1b〜gの歯科用CBCT画像より,上顎右側中切歯の歯冠部付近で上顎歯列弓より口蓋側にhigh density area が認められます(黄矢印).これが埋伏している過剰埋伏歯です.過剰埋伏歯と近接する切歯管壁は消失し,過剰埋伏歯と切歯管との接触が疑われます(図7-1b,c参照).過剰埋伏歯は上顎右側中切歯および側切歯と近接していますが,間に骨介在を思わせるhigh density areaを認めます.鼻腔底と過剰埋伏歯の間にもhigh density areaが確認でき,過剰埋伏歯の鼻腔への穿孔は否定できます(図7-1f,g参照). 上顎過剰埋伏歯に関して,以前は上顎中切歯の歯根がある程度形成されることや,ある程度萌出が行われたあとに抜歯を行うことが一般的でした4.患児の協力度を考慮すれば,できるだけ年齢が高い時期のほうが良好な協力を得られるため,摘出の際の心理的ストレスを軽減できるという利点があります2. しかし,それでは,逆生の正中過剰埋伏歯では歯が上行して抜歯が難しくなる症例や過剰埋伏歯の位置は変わらなくても隣在する永久歯の萌出が進んで抜歯が困難となる症例もあります.図7-1h,iは図7-1b,dの2年後です.過剰埋伏歯と上顎右側中切歯の間にhigh density areaが確認できません.つまり,2歯は接しているということになります.さらに図7-1fと図7-1jを比較した場合,過剰埋伏歯の位置は,歯槽骨からの距離も深くなっていることがわかります.また順生の過剰埋伏歯であっても,その埋伏位置や萌出方向によっては早期の摘出が望ましい症例もあります.■(前頁症例1の続き)図7-1h〜j h:図7-1bの2年後の上顎正中過剰埋伏歯の歯科用CBCTのaxial像.i:図7-1dの2年後の同歯科用CBCTのcoronal像.j:図7-1fの2年後の同歯科用CBCTのcross section像(黄矢印は過剰埋伏歯).hij₁₁85

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