「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法
1/4

2「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法 ―エビデンスに基づく超高齢社会への多職種連携アプローチはじめに ヒトはいつから「粧よそおう」ことをしていたのでしょうか? 現代において、化粧は日常生活に深く根付いた生活習慣といっても過言ではありません。多くの女性が当たり前のようにしている化粧は、だれが始めたのでしょうか。 文献を調べてみると、化粧を始めたのは、なんと旧石器時代の原始人類ネアンデルタール人のようです。およそ20~10万年前から、身体装飾(ボディペインティング)がされていたと考えられています。われわれの直接の祖先であるホモ・サピエンス、クロマニョン人が登場するよりも前の話です。当時の化粧の目的は、狩猟の際、自然に合わせてカモフラージュするため、呪術や信仰ためといわれています。 目的は変化していますが、約数十万年前から脈々と受け継がれているこの「粧う」という行為が、年齢を重ねるとさまざまな要因で徐々にされなくなっていく現実を皆さんはご存じでしょうか? 現代人(特に高齢者)で「粧う」行為が途切れてしまう可能性があるのです。  一方で、女性は「いくつになってもきれいでいたい」、「お化粧するのは楽しい」とおっしゃります。私が研究をとおして出会った元気な方も要介護の方も、皆さんの気持ちは同じです。 この「粧う」に対する気持ちと行動にギャップがあるのは、なぜでしょうか? 私は大学院に行きながら、通信制の介護専門学校に通っていました。その当時、2週間の介護現場実習があり、介護度5の93歳女性を担当していました。食事、更衣、排せつなどは全介助でほぼ寝たきり。1日に数分お話しするのがやっとの状態でした。

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る