「粧う」ことで健康寿命を伸ばす化粧療法
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3 彼女の部屋の壁には、数年前に撮影された孫や子どもに囲まれてにっこり笑うご本人の写真があり、唇には赤い口紅をされていました。 ある日、私が「写真の口紅がすてきですね。口紅はどうやって塗るのですか?」と尋ねると、一日中ほとんど動かない手がゆっくりと動き出し、口紅をつける動作をされました。おそらく、以前は当たり前のように口紅をしていたからその動きができたのでしょう。彼女は視界に入る過去の自分の写真を見て、なにを思っていたのでしょうか。 これまでしていた当たり前のことが、一生ずっと続く。やりたいことが当たり前にできる。それが本当の幸せではないでしょうか。本書をとおして、高齢期に「粧う」ことの意義、そしてそれを続けることによる社会的な価値についてお伝えできればと思います。化粧療法で今よりちょっと明るい超高齢社会をつくりたい、そんな想いで執筆させていただきました。2019年8月池山和幸はじめに

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