インプラント治療の到達点
5/6

インプラント補綴治療を行い、約16年後、₆に周囲炎を発症した(図8)。デンタルX線写真による同部の経過を観察すると、補綴後約10年(図9-a〜c)までは良好に経過しているが、約12年後(図9-d)には₇天然歯の歯周病の悪化および₆インプラント周囲の一部のMBLを認め、約3年間の未来院時期を経て約16年後(2018年、図9-e)にはMBLの進行を認めた。上部構造底部に多量のプラークの付着を認めた(図10)。メタゲノム解析細菌検査では、 Porphyromonas gingivalisなどのRED-Complexが非常に多く棲息し、細菌ピラミッドの比率がRED-Complex側に大きく傾いており、非常に病原性が高かった(図11)。 本症例は₆₄₅₆にインプラントを埋入している(図12-a~d)が、₆のみに周囲炎を発症した。インプラント埋入にあたり₆のみ自家骨によるGBRを施術し、さらに治癒過程で早期に歯肉裂開を認めた(図12-e)。ここが1回目のターニングポイントで、一次性インプラント周囲炎を引き起こしていたと考えられる。早期の歯肉裂開で自家骨による骨再生が十分に得られず、かつインプラント体の辺縁部が感染している可能性がある35)。さらに、仮着セメントでは上部構造が数回にわたり脱離したため合着用セメントで固定した。この際、遠心側にセメントが漏洩し残留した(図8)。これが2回目のターニングポイントで二次性インプラント周囲炎を引き起こしたと考える。 症例2の患者は66歳、女性。2004年(58歳時)に₃₃にインプラントを2本埋入し、磁性アタッチメント・オーバーデンチャー補綴を行い3ヵ月ごとのメインテナンス図8 インプラント補綴治療後約16年、₆に周囲炎を発症した。図10 上部構造に多量のプラーク付着を認めた。図11 細菌検査の結果、RED-Complexの比率が大きく傾いており、病原性が高いことがわかった。RED-Complexの比率が大きい図9-a~e デンタルX線写真による同部の経過。(a)5年後、(b)8年後、(c)10年後、(d)12年後、(e)16年後。(d)と(e)の間には、約3年間の未来院期間がある。abcde図12-a~d 右側(a、b)と左側(c、d)のインプラント埋入手術時の比較。図12-e ₆に早期歯肉裂開が生じた。abcde症例11011783章 インプラントを長期安定に導く 

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る