子ども口と顎の異常・病変 歯と顎骨編
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24CHAPTER 2 歯列と咬み合わせの異常・病変渡部 茂(明海大学保健医療学部口腔保健学科)異所萌出1歯が本来萌出するべき部位に萌出せず,異なった部位に萌出することを「異所萌出」という.異所萌出は,萌出スペースの不足,乳歯の晩期残存,過剰歯や根尖病変の存在などにより,萌出方向に異常が生じることが原因とされている.第一大臼歯の異所萌出原因第二乳臼歯は,形態的に歯頚部の狭窄が著しいという特徴がある.第一大臼歯の萌出は第二乳臼歯の遠心面をガイドに萌出するが,その時期に顎堤の発育が不十分で,第一大臼歯が萌出するだけのスペースが確保されていない場合,萌出時に第一大臼歯の第二乳臼歯遠心面に対する傾斜は強くなり,第一大臼歯の遠心咬頭が第二乳臼歯の狭窄した遠心歯頚部にもぐりこんでしまい,完全な萌出が困難となる状況に至る(図1).何をする? GP・小児歯科の対応放置すると,第二乳臼歯の遠心側歯頚部あるいは歯根部が吸収して,抜歯に至るケースも生じる.軽度のものは歯冠離開ゴムを隣接面に挿入して経過を観察する.遠心側歯根部,歯頚部が吸収しているような場合は,萌出をブロックしている第二乳臼歯歯冠遠心面をスライスカットし,歯の萌出をスムーズにする.削除した分スペースが失われることになるが,萌出後に装置を挿入し,近心傾斜した第一大臼歯を遠心に起こす.同様のことが第二大臼歯萌出時にも起こるので,注意が必要である.予防策としては,第一大臼歯や第二大臼歯の萌出の際には定期的に観察し,ゴムリングの装着など早めの対応を行う.図1 6歳の男児.6の近心咬頭がEの遠心歯頸部に入り込み,萌出が困難な状況を示す.

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