子ども口と顎の異常・病変 歯と顎骨編
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歯と歯質の 異常・病変歯列と咬み合わせの異常・病変エックス線写真でみえる異常・病変歯の外傷・口の外傷顎関節と顎骨の 異常・病変学校での歯科健康診断時の注意事項474 歯牙腫佐野次夫(東京西徳洲会病院歯科口腔外科)歯牙腫4原因「歯牙腫」とは,歯の硬組織の増殖を主体とする腫瘍である.歯原性腫瘍のなかで,エナメル上皮腫とともに高頻度に発生する成熟歯牙硬組織の形成異常による過誤腫である.埋伏歯の歯冠部に発生することが多いため,歯槽骨内にあることが多い.歯牙腫は歯の象牙質およびエナメル質が無痛性に増大あるいは数を増加するもので,その形状によって「複雑型」と「集合型」に分類される.「複雑型」は不規則な配列の歯の硬組織が正常な歯の形態をとらずに,異常配列あるいは増殖した状態をいう.「集合型」は種々の大きさと形をした多数の歯様の硬固物が多数集合したものをいい,その割合は1:3とされる.何をみる?GP・小児歯科の鑑別診断診断小児歯科で,歯の捻転,正中離開,周囲歯の晩期残存,萌出遅延などで,臨床的に歯牙腫が発見される場合が多い.その二次的障害として,歯列不正・咬合異常などが成長発育期の小児に引き起こされる.診断は,エックス線診査で容易に発見される.パノラマエックス線写真ならびにCT画像で三次元的な病変の位置・形状が診断できる.好発部位は,「集合型」では上顎前歯部,「複雑型」では下顎臼歯部,好発年齢は10歳から20歳代である.症状歯列不正・咬合異常を生じ,無痛性腫脹が歯肉や顎骨に生じる.稀に下顎神経を圧排して三叉神経痛様疼痛を発症することがある.エックス線所見では,歯の萌出遅延または埋伏歯がみられ,エックス線不透過性病変として認められる.「集合型」では不規則な歯牙様不透過像の塊として,さらに「複雑型」では帯状のエックス線透過像病変に囲まれた不規則な塊状不透過像を認める.腫瘤周囲被膜や軟組織内には,歯原性上皮の存在により硬組織が誘導されて,石灰化象牙質がみられる.「幻影細胞」の出現をみることもある.鑑別診断では,「複雑型」では骨腫や骨異形成症などがあるが,「集合型」の診断は歯の形をしているため,きわめて容易である.口腔外科の対応・テクニック外科的摘出術が基本となるが,歯牙腫の周囲に永久歯や歯の根尖部などがあるため,狭小な環境下での手術が必要となる.小児の手術では治療時の安静が図れない場合が多く,安全に手術を遂行するためには,全身麻酔下での手術が必要となる場合が多い.そして,摘出後に速やかに永久歯の萌出誘導を行うことが小児期においてきわめて重要となる.予後極めて良好である.

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