矯正YEARBOOK2019
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図5 早期接触のため下顎を前方に出し中心咬合位をとる機能性反対咬合.永久切歯乳切歯乳歯列永久切歯図4 骨格性下顎前突症による乳歯反対咬合.図2 乳児下顎運動様式(参考文献3のFig. 74より引用改変).図3 乳歯列と永久切歯の萌出関係(参考文献4の図 1-34,4-14より引用改変).013臨床家のための矯正YEARBOOK 2019成長期の反対咬合─その発症の背景と治療の考え方下顎過成長がかかわる骨格性反対咬合と理解すべきである(図4).このような反対咬合は自然治癒しない.症例に応じた成長制御治療は選択肢の1つである.(2)混合歯列期反対咬合 混合歯列期では永久切歯が早期接触を起こす場合がある.そのような場合,中心咬合位をとるために下顎は機能的に前方に出され,機能性反対咬合が形成される(図5).早期接触の発症は低位舌や骨格系の問題に起因することが多い.そのため,治療方針の設定では顎口腔全体の綿密な診査が必要である. 切歯早期接触は歯根の吸収や形成不全を起こす恐れがあるため早期に改善すべきである.舌側弧線装置などによって上顎切歯の唇側移動を行う治療では症例によって唇側傾斜度が大きくなり,生理的・形態的に良好な咬合様式にならないため,顎態に応じた成長制御治療を行うことが必要になる.しかし,骨格系の問題が存在する場合では,治療を行っても反対咬合の再発がしばしば認められるため6,成長期には治療を行わず,成長終了後に外科的対処を含めて検討することが望ましいとする考え方がある. 一方,個体の性格形成期に発症する成長期反対咬合は,顔貌や発音・咬合機能不全に起因して劣等感の醸成7や子ども社会のなかで“いじめ”の対象になりやすいため,効果が一時的であっても上顎前方牽引や下顎骨成長抑制治療などを行うことが望ましいとする考え方もある.治療方針の設定は術者にとって悩ましいところであるが,いずれにせよ患者の主訴と症状の程度を基点に考え,保護者とも十分なインフォームド・コンセントをもって対処することが必要である.

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