再根管治療の成功率を高めるスカンジナビアエンド
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 『エンド・ペリオ日常臨床のレベルアップコース Ⅱ 世界でもっとも成功率が高いスカンジナビアエンド』(クインテッセンス出版刊)にも書いたが,再感染根管治療の成績は圧倒的に悪い.根管の状況によりその成功率は異なるが,たとえば比較的よく引用されるSjögren ら1)の追跡研究 を例にとってみよう. 彼らは356名の患者を根管治療後8~10年追跡し,予後に影響を与える因子を調査した.この研究は図1-1-1で示す,部分的な情報が引用されることが多い.確かにこの研究では根管充填をどこまで行うかを,根尖部付近まで/過剰な充填/過少な充填という3つの因子に分けてサブグループ解析しており,その根管充填の状況が有意に予後に影響すると表現されてはいる.実際に図1-1-1では未治療の感染根管への治療を行った8~10年後の予後と根管充填された距離との関連性が示されている.特にX線での評価で根管充填が根尖部から2mmまでに根管充填が行われている状態は,2mmよりもアンダーな状態と比較して成功率に有意な差(p=0.0004)があると分析されている.これは過剰に充填された場合と比較しても同様で,成功率に有意な差(p=0.003)が認められている. まとめると,未治療の感染根管の治療に関しては,X線的に根尖部から2mm程度で根管充填が行われるように治療した方が8~10年後の予後が良いと読めてしまう. 次に,再感染根管治療歯の治療成功率と根管充填の距離との関連性を示す図1-1-2を見てみよう.図1-1-1と比較して感覚的に,再感染根管治療においては根管充填の根尖部までの距離の因子があまり重要ではないという結果が見えてくる.図1-1-1同様,根管充填の距離で分類した3つのサブグループの,それぞれに「有意な差」がほとんど認められていないのである(p=0.65, p=0.10, p=0.53). つまり,Sjögren らの追跡研究はまるで根管充填のクオリティーが重要であるように引用されているわけだが,実際には他の重要な因子が結果に重大な影響を与えていることが明らかである.それは,術前の歯髄あるいは根尖部の診断が異なれば予後がまったく異なるということである. 表1-1-1から見て取れるように,治療前に根管が感染していないものについてはほぼ100%成功している.感染していても未治療の場合は90%近く成功,すでに根管治療が行われているものが感染している場合の再治療では60%程度の成功と極端に低再根管治療のエビデンス再根管治療の成績1-1-11章-11章 再感染根管治療の治療成績はどうすればよくなるのか12

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