ビジュアル 臨床補綴・歯周治療のマネジメント
5/8

咬合力が歯周組織に与える影響歯周検査・診断時に知っておきたい咬合の観点とは?111.咬合力に対する配慮 歯や歯列の保存,顎関節,補綴装置のトラブル回避にブラキシズム等のパラファンクション,悪習癖などの異常な咬合力の影響を無視することはできない.また正常な咬合力でも,歯列不正や歯の位置異常,咬合関係,歯周病に罹患した支持組織の弱い歯などに対する咬合力のコントロールの見極めが悪いと,咬合性外傷として悪影響を及ぼすこともある. 正常な咀嚼機能の際に歯列にかかる力は,最大咬合力と比較し非常に小さく2〜15kg程である1, 2.ー方,臼歯における最大咬合力は,30代男性で38〜68kgで,男性平均42.7kg,女性平均36.5kgとの報告がある1. なお,睡眠時におけるブラキシズム時での咬合力の最大値は81.2kgであった.持続時間の平均値は7.1秒であり,最長のものでは41.6秒間ブラキシズムが持続している例もあった.各被験者で,最大のものは睡眠時咬合力が覚醒時の最大咬合力を超えており,111.6%であったと報告している2.また,歯の破折も,前述の咬合力との関連が考えられる. このようなことから,異常な咬合力によって起こる問題と対処法を知ることは,とても重要である(図1).2.咬合力の診断と力のコントロール 歯の移動には,病的な移動と自然移動の2つが挙げられる.自然移動には,加齢による歯の咬耗などによる自然挺出,接触点の摩耗による近心傾斜などがある.進行した歯周病では,歯の病的な移動を起こすが,それをそのまま放置しておくと,その歯にかかる力は外傷性咬合力となり動揺度が進行し,付着が破壊されている歯周病では共同破壊因子として働くことがある3. 歯の病的な移動の原因として,歯根膜炎,歯周病,対合歯や隣在歯の欠損,舌癖などの悪習慣などがある.しかし,歯周治療においては治療後,生体恒常性を保つために自然移動を起こすことが,多くの臨床報告で示されている.そのため,咬合調整や形態修正などの不可逆的な歯の削合をともなう治療には,その診断とタイミングに注意が必要である. 歯に悪影響をもたらす力としてジグリングフォースと過大な咬合力があることは広く知られているが3,治療過程においてそれらを回避するための手法がその治療効果と結果を大きく左右する.その手法としては,歯の安静を保つための暫間固定や,ブラキシズムのある患者にナイトガード装着を促す,といったものがある.また,その歯にかかる咬合力の診断には,いくつかの要素が密接に絡んでくる.強い咬合力と歯周病などで付着が破壊されていない場合は,垂直性骨吸収との直接的な相関関係はないとされる4.6666

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る