ジャパニーズエステティックデンティストリー2020
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Interdisciplinary approach for improved esthetic and functional resultsCase Presentation 患者は43歳女性で職業はアナウンサー。歯肉の腫れと上顎前歯に装着されていた旧補綴物のチッピングを主訴に来院された。また、会話時に唾液が飛び、顎が疲れるとも訴えており、審美的・機能的改善を希望された(Fig 1 and 2)。歯周組織には既存修復物周囲に軽度歯肉炎が認められた。 初診時、正面観からの問題点(Fig 3)から、上顎前歯部補綴物の再治療のみで改善可能と思われたが、咬頭嵌合位におけるオーバージェットが7~8mmあり、いわゆるオープンバイトの状態であった(Fig 4)。咬合様式もアンテリアガイダンスが喪失しているためほぼフルバランスドオクルージョンで、上下顎大臼歯部に著明な咬耗が見られた(Fig 5 and 6)。また顔貌評価から、顔面正中に対して正中が左側に偏位していた(Fig 7)。セファログラムから、フェイシャルパターンはAverage Type、上顎前歯の唇側傾斜、下顎骨の後方位および下顎前歯の舌側傾斜によりオープンバイトがあり、それに叢生をともなうAngle ClassⅡ症例と診断された(Fig 8)。 CADIAX(GAMMA Dental,白水貿易)による顎機能検査では、開閉口時・発音時ともに安定した位置に収束せず不安定であり、模型診査同様CRとICPに2mm以上のずれがはじめに 高い審美性を求め、また複雑な治療を要する患者に対しては、まずはマクロの視点から顔貌・顎位・咬合・歯列などの診査・診断を行って問題点を明確にし、そこからどの分野の治療が必要になるかを判断しなければいけない。さらに治療結果を長期的に維持するために、最小の侵襲で最大の効果を得るMinimally Invasive Treatmentのコンセプトに沿ったミクロの視点での精密な治療手技も不可欠である。このこみられ、機能的問題も認められた(Fig 9)。 歯科的既往歴から、患者は以前より上顎前突を気にされており、約20年前に前医によって職業柄矯正装置は装着できないとの理由から21、1、3を抜髄、2を抜歯して補綴治療が行われている。これにより上顎前突は改善されたが、①オープンバイト、②下顎歯列の叢生、③上顎前歯部歯肉レベルの不整(ハイスマイル)という3つの問題は残っている状態であった(Fig 10)。 今回の治療にあたり、機能的改善のために患者の同意を得て全顎的矯正治療を行い、加えて補綴治療でアンテリアカップリング・アンテリアガイダンス・バーティカルストップを確立し、また矯正治療後に総合的に判断して歯周形成外科にて上顎前歯部の審美的改善を図ることとなった(Fig 11)。 また補綴設計は、MI(Minimally Invasive Treatment)のコンセプトをもとに、上下顎大臼歯咬耗部にはオクルーザルベニア、上顎前歯部に関しては3摩耗部にはPorcelain Laminate Veneer (以下、PLV)、既存補綴物のやりかえ部にはジルコニアフレームを用いたクラウン・ブリッジで対応することにした(Fig 12)。とは歯牙(硬組織)に限らず、歯周組織(軟組織)に対しても同様なことが言える。 今回、前歯部審美障害および機能障害を有する患者に対して、矯正治療・補綴治療・歯周形成外科など包括的治療を行った結果、審美的・機能的改善が認められた症例を提示させていただく。THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 202021

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