臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本
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30歯科医院の診断力・対応力UP! 臨床で遭遇する口腔粘膜疾患に強くなる本品としてハリゾンシロップ(富士製薬工業),イトラート®カプセル50(日本ケミファ)等がある. ファンギゾンシロップとハリゾンシロップはポリエン系薬剤の小児用のシロップで,原液のまま,あるいは50倍液を含み含嗽した後にゆっくりと嚥下する.フロリードゲル,イトリゾール®カプセル,イトリゾール®内用液とイトラート®カプセル50はアゾール系薬剤でカンジダの酵素を阻害し効果を発揮するが,この酵素はヒトの肝臓の薬物代謝酵素と類似しているので,併用薬の血中濃度が上昇する.併用禁忌薬が多く処方には厳重な注意が必要である.また,C. glabrataにはアゾール系抗真菌が効きにくいので注意が必要である1~4.ミコナゾールのオラビ®錠50mg(富士フイルム富山化学)が発売された.わが国初の口腔粘膜付着錠で,1日1回・1錠を上顎犬歯窩に付着させて用いる.コンプライアンスがよく,期待されるお薬である.り生じやすい.③真菌検査を行う. 真菌検査でカンジダが陽性であれば,抗真菌薬の使用で症状が消失する.④舌痛症との鑑別法. いわゆる舌痛症では,口腔粘膜の発赤は認められない.また,灼熱(ヒリヒリ)感は,食事など,ものを口にすると消退するが,紅斑性カンジダ症では灼熱(ヒリヒリ)感は消えることはない.⑤抗真菌療法での注意事項. ハリゾンシロップ100mg/mL(富士製薬工業)やファンギゾン®シロップ100mg/mL(ブリストル・マイヤーズ スクイブ)などのアムホテリシンBシロップ薬は,併用禁忌薬も少なく効果が高い.しかし,原液の使用では服薬開始時に痛みが生じ自己中断する症例が散見される.痛みが生じて使用できない症例では,水で50倍程度に希釈して口に5分程度含んだ後に飲み下すと良いが,適応外使用となる.痛みが消えたら原液の使用再開を指導する.■患者に「口の中・舌がヒリヒリする」と言われたら 口のヒリヒリ(灼熱感)や痛みには原因がある.心理的なものと決めつけないで,歯科衛生士が症状をよく聞き,患部をよく見て,効果的な治療に導く必要がある.①周囲と比較して注意深く観察し,訴えを傾聴する. 紅斑性カンジダ症ではカンジダが原因で口の灼熱(ヒリヒリ)感が生じる.患部は周囲粘膜より赤いが,口腔粘膜は赤いので見逃されやすい.周囲と比較して注意深く観察する必要がある.舌背が赤いと相対する口蓋も赤いことが多い.灼熱(ヒリヒリ)感とともに苦みを訴えることが多い.②病歴の聴取は的確に行う. 副腎皮質ホルモン剤の長期連用症例や糖尿病,悪性腫瘍の化学療法や放射線療法症例,HIV感染症,高齢者や要介護者などの免疫能の低下した患者に生じやすい.慢性呼吸器疾患でのマクロライド系抗菌薬の長期連用症例では,菌交代現象によ歯科衛生士もおさえておきたいポイント診断力・対応力UP!参考文献1.山口英夫.病原真菌と真菌症(改訂4版).東京:南山堂,2007.2.寺井陽彦,島原政司.古くて新しい真菌症:続・赤いカンジダ症.日本歯科評論 2007;267(5):137‐145.3.上川善昭,杉原一正.口腔カンジダ菌と口腔粘膜疾患の意外な関連.Mebio 2006;23(11):4‐11.4.上川善昭.総説口腔ケアに必要な口腔カンジダ症の基礎知識.診断・治療と口腔ケアによる口腔カンジダ症の予防.日口腔ケア会誌 2010;4(1):17‐23.

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