歯科衛生士のための21世紀のぺリオドントロジーダイジェスト増補改訂版
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81P. gingivalis の生き残り戦略 歯周病菌を追い出せない理由の1つに、歯周病菌は細胞内に侵入することがあげられます。最近の韓国の臨床研究で、P. gingivalis は歯周組織内に大量に棲み着いていることがわかりました(図4-14)。歯周組織に侵入した歯周病菌は、薬や器具で殺菌したり駆除したりすることはできません。これも歯周病が完治しない理由の1つです。歯がなくなったら、歯周病菌はどうなる? すべての歯がなくなっても、歯周病菌は口腔内で生き残ります。まずは舌苔の中。舌表面のシワや溝の深い所には酸素が届かず、嫌気性菌である歯周病菌の絶好の棲みかになります。また、舌表面には食事のたびにいろいろな栄養素が運ばれてきますから、食べ物にも不自由はしません。ですので、舌は「細菌のゆりかご」と呼ばれ、さまざまな細菌の安住の地となっています(図4-15)。さらに、歯周組織、舌組織、口腔粘膜組織などの中でも細菌は生き長らえていると考えられています。 したがって、無歯顎の患者さんでも舌のプラークコントロールは重要です。また、無歯顎にインプラント治療を行った場合でも、軟組織からやって来た歯周病菌はインプラント周囲炎を引き起こすリスクがあります。図4-15 舌は「細菌のゆりかご」図4-14 プラークと歯周組織、P. gingivalis はどっちにたくさん棲んでる?韓国の歯周病患者7名(平均ポケット深さ5.3±0.7mm)のプラーク中の菌量と歯周組織中の菌量を比較した。一般の菌種はプラークに10倍~3,000倍多く棲息していたが、P. gingivalisは歯周組織に多く棲息していた。(文献35より引用改変)全細菌種P.gingivalis103104105106107プラーク歯周組織細菌数10010110215202530プラーク歯周組織P. gingivalis量/全細菌量(%)0510患者1患者2患者3患者4患者5患者6患者7歯周組織に多い!

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