YB2020 スタッフにも読ませたい 人生100年時代の予防・メインテナンス
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深在性う蝕病変泉 英 之 滋賀県開業 西本歯科医院●まずは大きなう蝕を見逃さないことが重要.●ライフステージに応じたリスク部位の診査,リスクに応じたエックス線写真撮影を行う.●歯髄保存の可否は術者の知識と技術次第.少なくともルーペ,できればマイクロスコープを用いた強拡大視野下で治療を行う.深在性う蝕病変への対応のポイントPointはじめに 人生100年時代,それぞれのライフステージで歯を守るための大切なポイントがあるが,そのなかのひとつに有髄歯を無髄歯にしないことが挙げられる.Caplanらは根管治療が行われた歯の喪失率について時間軸のある臨床研究で調査しており,有髄歯に比較し,前歯ではオッズ比1.8,臼歯では7.4という数字を報告している1.筆者はメインテナンスをベースとした歯科医院づくりをはじめ10年以上経つが,メインテナンス中に歯を喪失する原因のほとんどが無髄歯の歯根破折によるものである.このように,歯髄の有無は将来の歯の喪失を決める大きな要素であるため,安易な抜髄を避け,可及的に歯髄を保存することが重要である.ここでは,深在性う蝕病変に対する診断と治療方針について簡単にまとめる.1.そのステージの患者において,歯科医院で診るべきポイント・注意点1)診断①う蝕の診査・診断 初診時,メインテナンス時に視診とエックス線写真撮影を行い,う蝕の有無を診断する.視診を行う際は十分な照明のもと術野をよく乾燥させ,できれば拡大鏡またはマイクロスコープを用い診査する. 近年,フッ化物の応用が広まったことから,エナメル質が高度に石灰化し,視診のみでは象牙質う蝕を見逃すことがあり,リスクに応じたエックス線写真撮影を行うことでこれを避けられる.パノラマエックス線写真はデンタルエックス線写真に比較し,感度・特異度ともに低いため,デンタルエックス線写真撮影を行う.撮影方法や頻度は患者のう蝕リスクに応じて決める.う蝕の診査のためには平行法で撮影を行う.二等分法は根尖部の診査・診断に有用だが,歯冠部の診査・診断の精度が下がる2.②歯髄の診断 視診・エックス線写真診査の結果から,歯髄に近接した深在性う蝕病変を認めた場合,複数の検査から歯髄壊死の確率を診断する.いろいろな検査方法があるが,もっとも研究され診断精度を高めることがわかっているのが,冷温度診(Cold test,図1)と電気歯髄診(EPT,図2)である.ただし,これらをいきなり用いても臨床的に求められる診断精度になPart 5成人期 20歳〜100別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2020」

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