YB2020 スタッフにも読ませたい 人生100年時代の予防・メインテナンス
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forthe100yearslifeThe Oral Health Careらない.他の診査と組み合わせて用いる3,4(図3). すべての臨床症状が正常範囲内で冷温度診に反応を示す場合,歯髄壊死の確率は非常に低い.露髄の有無にかかわらず,歯髄保存の適応症である.わずかな臨床症状があるが,冷温度診やEPTで反応を示す場合,可逆性の炎症または歯髄が部分的に壊死している可能性がある.壊死の範囲を臨床的に特定する科学的根拠に基づく基準はないが,壊死の範囲に応じて,直接覆髄,部分断髄,歯頸部断髄を使い分けることで,歯髄保存が可能になる4(図4).図1 a:冷刺激による温度診に用いるコールドスプレー(パルパー,ジーシー).b:綿球または付属のスポンジに液が滴るくらいの量をスプレーすることが重要である.c:歯冠部中央から歯頸部に当てる.綿球は大きさを自由に変えられ,歯頸部にピンポイントに当てられるため,使いやすい.図3 Ricucciらは,複数の基準を用いることで,感度と特異度が高くなると報告している.つまり,診断の精度が高くなる.ただし,痛みの強さなど,診査の基準が術者によって変わることや,どの要素をどれくらい重視するのかによって診断が変わるため,アートの要素は少なからず存在する.図2 a:歯髄電気診断器(デジテスト2,モリタ).この製品は,グローブをしたまま検査を行えるので,便利である. b:EPTは歯磨剤を付け,切端部にプローブを当てる.コンタクトにセルロイドストリップスを入れると,隣在歯への刺激が伝わらないようにできる.ab acb可逆性歯髄炎の基準自発痛の既往なし冷水痛や甘味痛があっても,わずか歯髄生活試験は正常範囲内,または温度診の異常があってもわずか誘発刺激による痛みが,刺激除去後,数秒以内で消失打診痛なしエックス線写真で根尖部に異常を認めない不可逆性歯髄炎の基準痛みの既往あり鎮痛剤服用の既往誘発痛や自発痛の継続夜間痛や日常生活に支障のある痛み患者が痛みの原因歯を特定できない歯髄生活試験で異常な反応を示す誘発刺激除去後も痛みが継続する歯髄壊死の確率96% 可逆性歯髄炎の基準  不可逆性歯髄炎の基準 84%非常に低い低い中等度高い非常に高い複数の基準を用いた歯髄壊死の診断101別冊the Quintessence 「YEARBOOK 2020」

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