歯科衛生士のための全身疾患チェアサイドbook
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本書の使い方本書の特徴●Part1は、全身疾患がある患者さんの診療にあたる際に、最低限必要な知識や対応法を、歯科衛生士向けにまとめたものです。●診療所で遭遇しやすい28疾患を取上げました。●診療前など短時間で理解できるよう、各疾患の解説を4つの視点で簡潔に説明しています。●全身疾患患者さんの診療に不可欠な関連知識として、バイタルサインのとり方(Part2)、 救急蘇生法(Part3)、医療面接の際の質問事項(Part4)も収載しました。あわせて活用してください。脳血管障害によって患者はどんな生活を送っている?2脳梗塞血栓くも膜下出血脳出血どんな疾患? 脳血管障害のうち、突然の発作を脳卒中(脳血管発作)と言います。脳卒中は「出血性」と「閉塞性」に分かれます。出血性は脳血管から出血することで脳が圧迫されるもので、「脳出血」と「くも膜下出血」があります。一方、閉塞性は血栓による虚血で「脳梗塞」が起こります(図1)。いずれも脳組織に障害が起こり、その障害部位によってさまざまな後遺症が残ります。何が原因? 脳血管障害のほとんどの患者に、基礎疾患として高血圧症があります。また、不整脈、糖尿病、高脂血症、大量の飲酒、喫煙、運動不足、肥満などが危険因子とされています。どんな検査・治療をするの? CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴コンピューター断層撮影)、MRA(磁気共鳴血管造影)などの画像検査で、障害の部位と原因を調べます。MRAとは、MRIを使って血管だけをより鮮明な画像にする方法です。 治療法として、脳出血やくも膜下出血では、必要に応じて手術を選択します。脳梗塞の急性発作時には血栓溶解療法が行われます。どんな薬を使用しているの? 脳梗塞の治療後には再発予防のために、抗血小板薬を服用します。心房細動(心房が震えて心臓からの血流量が減るとともに心房内の血流の乱れにより血栓ができやすくなる状態)などの不整脈がある場合は、抗凝固薬が処方されます。抗血小板薬と抗凝固薬をあわせて抗血栓薬といいます(表1)。抗血小板薬と抗凝固薬の両方を飲んでいる患者も少なくありません。その他に降圧薬や高脂血症薬などを服用しています。生活上で気をつける点は? 抗凝固薬のワルファリンは、食事や他の薬剤の影響を受けやすく、特にビタミンKは効果を低下させてしまうため、納豆、海藻、緑茶、クロレラ、緑黄色野菜などのビタミンKを多く含んだ食品の摂りすぎに注意する必要があります。また薬剤では、アスピリンやミコナゾールが効果を増強し、カルバマゼピンは効果を低下させます。これらは歯科でも使う薬剤ですので注意を払います。図2 ワーファリン 内服用の抗凝固薬。表1 抗血栓薬抗血栓薬の種類主な薬品(代表的な商品名)抗血小板薬バイアスピリン®、バファリン、パナルジン®、プラビックス®、プレタール®抗凝固薬ワルファリン(ワーファリン)、プラザキサ®、イグザレルト®、エリキュース®、リクシアナ®脳血管障害Cerebrovascular disease図1 脳血管障害の分類1Chapter脳血管障害はどんな病気?112P012-019_SOS_1_1-4.indd 122019/11/26 16:26Part1を読む前に―4つの視点で各疾患をチェックしよう―● 病気の基本知識全身疾患の特徴や原因、検査、治療法等を端的に解説。1ッチクェ● 患者の病状・服薬・ 食生活・通院状況など全身疾患があることでどのような生活を強いられるのか、またどのような薬を日常服用しているのかなど、患者のバックグラウンドを中心に解説。2ッチクェ6

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