歯科衛生士のための全身疾患チェアサイドbook
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Chapter高血圧症5口腔への影響は? 高血圧が口腔に直接影響することはありませんが、降圧薬のカルシウム拮抗薬の長期服用によって上皮下の線維が増殖し、歯肉増殖が起こることがあります(図1)。対処法として、十分なプラークコントロールと歯周基本治療に準じた処置をし、必要に応じて歯肉切除術を行います。どんな口腔を呈する? 歯肉増殖症では、歯冠の一部を覆うように歯肉が腫脹します。表面は平滑で、色は正常な粘膜色です。痛みはなく、触診での硬さは周囲の歯肉と同じくらいです。来院時に収集する情報は? 50歳以上の2人に1人は高血圧症で、患者総数は3,700万人ともいわれています。自覚のない患者も多いため、特に高齢者では初診時に血圧の確認を行いましょう(図2)【75ページ参照】。また、血圧のコントロール状態とともに合併症の有無や常用薬の内容を知ることが重要です。処置の際に気をつける点は? 降圧薬や常用薬を来院当日もきちんと服用していることを確認します。高血圧症の患者はストレスにより容易に血圧が変動するため、できるだけ不安や緊張をかけないように歯科治療を行います。血圧モニターも積極的に使用しましょう。 アドレナリンは血圧を上昇させる作用があります。アドレナリンの添加された局所麻酔薬の歯科用キシロカイン®カートリッジは、高血圧には原則禁忌となっているので、その使用量に注意が必要です。来院時の発作等への対応は? 血圧が160/95mmHg以下であれば、通常の歯科治療は可能です。歯科治療中に血圧が上がったら、ユニットを少し起こして半座位にし、安静にしたうえで、酸素吸入(3~5L/分)を行い、経過観察します。それでも血圧が下がらない場合は、降圧薬(アダラート®など)や血管拡張薬(ミオコール®スプレーなど)を用います。図1 降圧薬による歯肉増殖症高血圧症患者の口腔内の特徴は?3高血圧症患者に歯科衛生士はどうかかわる?4図2 簡易自動血圧計手首に巻くだけで自動的に血圧を測定するタイプ。21

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