ビジュアルマイクロサージェリー
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 本項では,マイクロスコープを用いた抜歯について解説する.まず,筆者のマイクロスコープ下の外科処置について総論を述べる. ポジショニングはすべての処置を通じて基本的に9時の位置であるのは前述のとおりであるが,その概要を図1に示す.術者(①)は患者の9時の位置,アシスタント(②)は3時の位置につく.術者は図のようにマイクロスコープ(③)を覗きながら器具はユニットの台(④)より術者自身で取り(ここがポイント:後述),口腔内に挿入する.当院では外科処置を受けるすべての患者に生体モニター(⑤)を装着し術者も介助も見える位置に置く.マイクロスコープの撮影中の画像,各種エックス線の画像は画像モニター(⑥)にスイッチングハブで切り替えながら映し出すことができる. マイクロスコープ治療では術者が接眼レンズから目を離したくないため,器具を手渡しで行うことが主流であると思われ,その最たるものがDr. Maciej Goczewskiによる“Six-Handed Microscopic Dentistry”1である.術者はアシスタントから渡された,右手と左手に決められた器具を使っていき,接眼レンズよりまったく視野を外さずに処置が進んでいくのが顕微鏡下治療の1つの理想形といえよう. 一方,筆者自身は鏡筒から視野を外すことをまったく厭わない.たとえば,インプラントの埋入時などはマイクロスコープの横から俯瞰的に見て全体像を確認しながら処置を行うこともある.その場合でもマイクロスコープの三大要素(拡大,照明,記録)のうち後者2つを立派に活用できるのである.こと口腔外科処置では術者自身が器具を選択して進めていくことが多く,その処置の特性上,尖端が鋭利なものが多いため,患者の口腔内に挿入する際に細心の注意が必要である.よって術者自身が接眼レンズから視野を外し,器具をピックアップして口唇に当てないように口腔内に挿入するところまでを行うことに執着した.歯科治療時にマイクロスコープの接眼レンズから目を離してはいけないという決まりはないので,患者の安全性を考慮して治療をあたるべきと考えている. また,その際にマイクロスコープの接眼レンズか1マイクロスコープ下の外科処置瞳孔は垂直に保たれる下顎前屈上顎後屈図1 9時のポジションでマイクロスコープを使用する際の構図.①術者,②アシスタント,③マイクロスコープ,④ユニットの器具台,⑤生体モニター,⑥画像モニター①②③④⑤⑥34

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