ビジュアルマイクロサージェリー
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 マイクロスコープを用いた外科的処置のなかで,かなりのメリットを生み出すのではないかと思うのがサイナスアプローチである.上顎洞内に骨造成を行ってインプラントを埋入する術式を指すが,いわゆる「サイナスリフト」と「ソケットリフト」がある.本書では前者を側方アプローチ(lateral approach)でLA,後者を歯槽頂アプローチ(crestal approach)でCAと呼称する. サイナスアプローチの際に問題になるのが上顎洞粘膜であるが,耳鼻咽喉科医によると上顎洞粘膜の肥厚よりも上顎洞上方の自然孔(自然口)から篩骨漏斗,半月状裂孔を経て中鼻道に向かうOstio Meatal Complex (OMC)が解剖学的に重要であるという(図1).術前の上顎洞粘膜が多少肥厚していても,OMCに含気性があって上顎洞内の換気が保たれていれば問題なくサイナスアプローチが可能であろう.しかし上顎洞粘膜に肥厚や嚢胞が認められなくても,OMCが詰まっていると術後に上顎洞炎を引き起こすリスクがあり,耳鼻咽喉科医に対診すべきである. 以下にマイクロスコープを用いた一般的なサイナスアプーチ症例を供覧する.1)症例G 患者は50代男性.両側のLAを依頼され出張手術にて行った(図2).術前のエックス線写真を図3に示す.依頼元の医院は筆者と同じマイクロスコープでかつオプションも同じ(50mmのスペーサー)であるため,当院とまったく同じ環境で手術ができることが大きな利点である(図4).2)症例A Chapter5で供覧した症例の上顎左側のインプラント治療をマイクロスコープ下で行った.術前のエックス線写真を図5に示す.1サイナスアプローチの考え方瞳孔は垂直に保たれる顕微鏡下顎前屈上顎後屈術者3進法下歯槽動・静脈下歯槽神経舌神経4mm1: 前大脳動脈16:前交通動脈2: 中大脳動脈3: 後交通動脈4:脳底動脈15: 外頚動脈5: 内頚動脈の頚部14:舌骨13:甲状軟骨12: 甲状腺11: 総頚動脈10: 腕頚動脈6: 頚動脈洞8:椎骨の横突起7:椎骨動脈9:鎖骨下動脈CGFメンブレンProseed ScrewΦ1.4-6mmSp4.1-10.RNヒーリングキャップ3mmExt8piezoで薄めに骨採取半月状裂孔篩骨胞篩骨漏斗上顎洞自然孔鈎状突起中鼻甲介中鼻道②①XZY図1 上顎洞自然孔から篩骨漏斗,半月状裂孔を経て中鼻道に向かう部分を Ostio Meatal Complex(OMC)と呼ぶ.図2 出張サイナスリフト時の準備の様子.図3 症例Gの術前の上顎のエックス線写真を示す.左右とも上顎洞底までの距離が短い.図4 筆者の医院と同じオプションのマイクロスコープであるため,まったく同じ環境で手術が可能である.図5 症例Aの上顎左側のエックス写真線を示す.上顎洞底までの距離が短いことがわかる.23496

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