歯内療法のパラダイムシフト
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50別冊 the Quintessence 「歯内療法のパラダイムシフト」 MTAの登場は,これまで歯髄保存が選択肢になかった術者を歯髄保存へと振り向かせた. 歯髄温存療法(Vital Pulp Therapy:以下,VPTと略)の歴史は古く,1950年代から行われてきた.VPTについては良い予後を示す臨床研究が報告されてきた一方で,長期予後が良くないという意見や診断の難しさ,歯髄保存後の歯髄の石灰化の可能性があるため露髄した歯髄は抜髄するべきという意見もあり,歴史的にも是非についての見解が一致することがなかった1.しかし,MTAの登場は世界中の歯科医師を歯髄保存の方向に向かわせたといっても過言ではない. その一方で,MTAがあれば何でもできるといった,MTAに過剰な信頼を置く風潮があるのも事実である.MTAは優れた臨床結果をもたらすことのできる材料であることは間違いないが,これを使えば必ず治るといった魔法の材料ではない.診断と治療方針,材料の選択,覆髄テクニック,最終修復といった一連の術式のなかのひとつのパートであることを認識しておく必要があり,術式全体の成否で結果が決まることを覚えておきたい. ここでは,とくに直接覆髄材としてのMTAを水酸化カルシウムと比較した場合,何が優れているのか,どう臨床応用するか,どのMTAを選択するかについて述べる.MTAが変えた歯髄保存の限界泉 英之滋賀県開業 西本歯科医院連絡先:〒526‐0037 滋賀県長浜市高田町14‐29はじめに5

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