歯内療法のパラダイムシフト
8/10

153別冊 the Quintessence 「歯内療法のパラダイムシフト」CBCTによる診断が変えた外傷歯治療への対応破折性の外傷図1a~d a:エナメル質の亀裂(enamel infraction),b:歯冠破折(crown fracture),c:歯冠-歯根破折(crown-root fracture),d:歯根破折(root fracture)に細分類される.abcdを指す.治療の必要性はない.②歯冠破折(crown fracture)(図1b) エナメル質あるいはエナメル質と象牙質の破折を指す.この歯冠破折をさらに露髄をともなわない単純歯冠破折(uncomplicated crown fracture)と,露髄をともなう複雑歯冠破折(complicated crown frac-ture)に分けることができる.③歯冠-歯根破折(crown-root fracture)(図1c) エナメル質,象牙質,セメント質に及ぶ破折で,露髄をともなうものと,ともなわないものがある.④歯根破折(root fracture)(図1d) 象牙質,セメント質,歯髄を巻き込んだ破折を指す.外傷では水平性または斜めの破折が主である.さらに,破折性の外傷と同時に脱臼性の外傷が生じていることも多いので,注意が必要である.2脱臼性の外傷①振盪(concussion)(図1e) 振盪は歯の変位,動揺をともなわない歯周組織へのわずかな傷害を指し,固定も含めて治療の必要性はない.②亜脱臼(subluxation)(図1f) 亜脱臼は振盪と同じく変位はともなわないわずかな動揺がみられる歯周組織への傷害である.しかし,根尖部で歯髄への血液供給を司っている脈管の一部または全部に断裂が生じている可能性がある場合を指す.③挺出性脱臼(extrusive luxation)(図1g) 歯が歯冠側へ変位するような歯周組織への傷害を指す.歯根膜への血液供給は完全には離断されていないが,歯髄への血液供給は完全に離断されている可能性が高い.④側方性脱臼(lateral luxation)(図1h) 歯が側方へ(唇側へ)変位するような歯周組織への傷害を指す.したがって,歯槽骨の骨折をともなって歯は唇側へ脱臼している.歯根膜への血液供給は完全には離断されていないが,歯髄への血液供給は完全に離断されている可能性が高い.⑤埋入(intrusive luxation)(図1i) 歯が根尖側の歯槽骨中へめり込んだ状態を指す.⑥脱離(avulsion)(図1j) 歯が完全に支持組織から離れた状態を指す.歯根膜,歯髄への血液供給は完全に離断している.

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る