アライナー矯正歯科治療
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440ClinCheck®ソフトウェアによる治療設計これは生物学的に実施可能か?臨床的に予知性があるか?本項ではよくある歯の動きを提示し、ステージングの手順について提案する。舌側に転位した歯ステージングまずスペースを開けてから、直立もしくは唇側への移動を開始する。原則歯を動かすにはスペースが必要である。Clin Checkは複数歯を同時に移動しアライメントできるようプログラムされており、実際そのように移動することができる。スペースが不十分だと移動する歯が隣在歯にぶつかり、目的に適う歯の移動が十分に実現されなくなる。すると、これらの歯の動きをアライナーで追うことができなくなる。そのため舌側転移した歯の移動は、スペースが開くまで遅らせることが望ましい。その後に歯を直立させるか、唇側に移動させる。これは、従来の矯正歯科治療において、口蓋側に萌出した上顎側切歯や舌側に萌出した下顎第二小臼歯にブラケットを装着する前に、スペースをつくるためにオープンコイルスプリングを設置するのと似ている。臨床応用図4-19では、下顎右側第二小臼歯が舌側に萌出している。アライメントする前に、当該歯の近遠心にスペースを開けるよう指示する。このとき、隣在歯の移動とIPRとで接触面を開き、歯が障害なく頬側へ移動できるようにする。歯列弓拡大と遠心移動の比較ステージングまず歯列弓拡大を行った後に遠心移動を行う。原則前歯部と臼歯部の2ヵ所で、同時に歯の移動を行うのは困難である。歯を遠心移動させると、すでに上顎歯列弓は下顎より狭くなっている。したがって上顎歯列弓が下顎歯列弓と調和するよう、歯を遠心移動させてより広い歯列弓形態にする必要がある。臼歯部に交叉咬合が存在している状況では、頬側の咬合における前後的ディスクレパンシーを改善するために遠心移動も必要となると、交叉咬合の改善がより困難になる。臨床応用図4-20は、上顎右側第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯が交叉咬合となった半咬頭分のⅡ級不正咬合である。順次遠心移動を行ってⅠ級の臼歯関係と犬歯関係を達成する前に、最初の12ステージで交叉咬合を改善するようClinCheck治療計画が策定された。臨床的に予知性がある歯の動きとなるよう、上顎両側大臼歯舌側と下顎両側大臼歯頬側に設置したボタン間に交叉ゴムを用いても良い(図4-21)。片側性の臼歯部交叉咬合症例では、歯科医師のコメント  ◦歯を直立させる前に、5近心側と遠心側にスペースを開けてください。Spee湾曲のレベリングを行い、アライメントに合わせて下顎切歯を唇側傾斜してください。図4-19 歯の直立とアライメントの前に、舌側に萌出した下顎右側第二小臼歯の近遠心にスペースを開けるよう指示している。

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