アライナー矯正歯科治療
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15282インターディシプリナリー治療(多分野の専門医による総合的治療)abcde複雑な修復症例では、審美、形態、機能の面で最適な治療結果を得るためにインターディシプリナリー治療[多分野の専門医による総合的治療]が必要になることが多い。TADやクリアアライナー、デジタル機器によるスマイルデザインなどの新手法は、複雑なインターディシプリナリー治療が必要な複数の歯科的問題を抱える患者らに、新たな治療の可能性をもたらした。本章では矯正的視点から、総合的治療の原則についてさまざまな臨床のシナリオを交えつつ論じる。修復治療に用いるスペースの再配分前歯部にベニア修復や歯冠修復が必要な患者には、治療計画に小矯正を組み込むことで、最善の治療結果が達成されやすくなる。ここで用いられる小矯正には、以下のような例がある。◦ベニア修復前に歯の捻転を改善する◦咬耗した前歯部切縁の修復をしやすくするために歯肉縁のレベリングを行う◦顔面の正中と歯列の正中を合わせる◦トゥースサイズディスクレパンシーがある部位にスペースを再配分する図15-1は上顎正中が離開したうえ、矮小な側切歯がBoltonディスクレパンシーの原因となった症例である。この患者には修復治療前の矯正歯科治療として、離開した上顎正中の閉鎖、上顎左側側切歯の交叉咬合の改善、ベニア修復前に咬合面クリアランスを確保するため側切歯を圧下し、その近遠心にスペースの再配分を計画した(図15-1a)。上顎には、第一小臼歯に固定用アタッチメントを2つ装着するのみとした(図15-1b)。また上顎中切歯との関係から、上顎側切歯の圧下と歯肉縁の調整を計画した(図15-1c)。これにより、ベニア修復に必要な切縁削除量が最小限に抑えられる。図15-1 a:矯正歯科治療の既往があり、正中離開と矮小な側切歯を認める。 b:治療開始前のClinCheckセットアップ。 c:治療終了後、修復治療前のClinCheckセットアップ。d:治療終了後、修復治療前の口腔内写真。正中離開は閉鎖し、上下の正中が一致している。なお、上顎側切歯はベニア修復時の切縁削除量が最小になるよう圧下されている。ベニア修復に備え、側切歯近遠心にスペースが確保された。e:上顎側切歯へのベニア修復治療終了後の口腔内写真。 

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