もっと使える超音波スケーラー
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理論編 同じスケーラーを使用する施術であっても、目的は一つではありません。スケーラーを使用する施術項目は、除去の対象物によって、スケーリング、SRP(スケーリング・ルートプレーニング)、デブライドメント、デプラーキングに分けられます13)。このうち、「デブライドメント」は、外来性の汚染物(プラーク・歯石)や汚染された組織(ポケット内に露出したセメント質の一部)を除去することであり、「SRP」は、それに加え象牙質面を滑沢に仕上げ、プラークの再付着を抑制することです(表2-2)。しかし、日本では健康保険用語でどちらも「SRP」と表現するため、除去の対象や歯面の状態について意識されることなく、使用する器具のハウツーについてのみ議論されることがよく見られます。 過去には徹底した「感染」の除去を目的とし、それに加え、新付着や歯肉のアダプテーションを得るために歯石とセメント質を除去し、根面を滑沢に仕上げることに重点を置いてSRPを行ってきました。近年になると、感染除去のためにセメント質を削除する必要はなく、象牙質の滑沢な面がなくてもアダプテーションが起こる14)ことがわかり、MI(minimal intervention)の観点からも、侵襲の少ない、超音波スケーラーによるデブライドメントが多用されるようになってきました。本項では、基礎研究からの理論的考察だけでなく、臨床研究からも考察します。 前章で述べたように、基本治療の目的はプラークの除去にあります。実際の臨床に即した研究では、超音波スケーラーを用いるデブライドメントでも、ハンドキュレットで行うSRPでも、どちらも正しく用いれば臨床指標には差がみられないことがわかっています(図2-12)15)。 超音波スケーラーのみでも高い効果が得られることはわかっていますが、術者の技量によっても結果が左右されるため、両者の特徴を熟知して使い分けるとよいでしょう(P.25 コラム参照)。 インスツルメントの違いのみに注目すると、超音波スケーラーとハンドキュレットでは臨床的に差はありませんが、根面における変化にはそれぞれの特徴があります。Ritzら(1991)(図2-13)の研究16)によれば、ハンドキュレットでは根面は108.9μm削除され、セメント質は完全に除去されて、象牙質面が露出します。一方、超音波スケーラーでは11.6μm削除され、セメント質は一部残ります。すなわち、ハンドキュレットではセメント質を除去して象牙質面を“滑沢”に仕上げ、超音波スケーラーではセメント質を除去することを目的とせずに歯石やプラークといった汚染物を除去して、セメント質の“塑像感のない”面に仕上げます(P.17表2-1)。SRPとデブライドメント7表2-2 SRPとデブライドメントの違いデブライドメントSRP使用器具超音波スケーラーハンドキュレット切削対象●プラーク・歯石●セメント質の一部●プラーク・歯石●セメント質●象牙質表面切削後の歯面の状態汚染物を除去した粗造感のない面カンナ掛けをしたような滑沢な面22

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