ホームドクターによる小学校2年生までに始める拡大床治療
1/11

序 文 筆者が子どもたちとふれあうことが好きだったということもあって,開業以来診療室には多くの子どもたちが来院していた.とくに小児歯科を専門に学んだわけではなく,成人治療のほうに興味をもって取り組んできたが,臨床記録を残すことの重要性はスタディーグループで叩き込まれていたので,来院する子どもたちの口腔内写真がしだいに多くなっていった.その記録を見返しながら,ダイナミックに変化する子どもたちの成長発育を診ていくことが,いつのまにか楽しみになっていった. その結果,診療における多くの試行錯誤のなかで,どのようにすれば子どもたちのう蝕を予防し,きれいな永久歯列に導いていけるかがおおよそわかるようになり,その内容をまとめた書籍として,2015年4月『ホームドクターによる 子どもたちを健全歯列に導くためのコツ』を発刊した.幸い,多くの先生がたに手に取っていただくことができ,発刊後は各方面から書籍の内容での講演依頼が多くなった. 講演をするなかで,先生がたから拡大床治療に関する質問を受けることが多くあり,開始する時期や適応症,設計や調整法など,毎日の臨床のなかで筆者が感覚的に行ってきたことを,1つひとつていねいに説明していかないと,相手に伝わらないのだということに気づき,講演を重ねるごとにプレゼンテーションの内容を改善していくことになった.また,拡大床治療を多く経験するなかで,より確実に結果がでるように工夫を重ねてきた.今回,その内容をまとめたものとして,拡大床治療にテーマを絞った書籍を発刊することになった. 拡大床治療といっても多くの方法があり,今回は開始時期や設計,使用方法などについて,かなり限定的な表現をしているが,それが筆者流のやり方であると理解して,読んでいただきたい.この本は,以前からある治療法を否定するものではなく,永く子どもたちの成長発育を診てきた者の責任として,ホームドクターの誰もが取り組み,確実に結果がでる治療法として紹介している.そのため,治療経過がわかるように,乳歯列や混合歯列期からきれいな永久歯列になったところまで示すことを意識した.もちろんすべてがうまくいくわけでもないので,良好な経過が得られなかったケースも,正直に紹介している.読者の皆様には,実際に自分がその子を治療しているような気持ちで読み進め,筆者がいろいろと工夫をし,数年かけて観察してきた子どもたちの成長発育を,一気に疑似体験していただければ幸いである.2020年9月須貝 昭弘

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る