よくあるケースでイチからわかる!開業医のための歯科訪問診療算定ガイド
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8 今後、歯科治療を必要とする人の多くが高齢者となることは疑いの余地がない状況です。予防歯科医療の普及により、若年者のう蝕や成人期の歯周炎は激減しています。歯科医院での診療内容も、う蝕治療が減少し、修復や補綴治療などを中心とした「歯の形態の回復」から、定期的な口腔管理の実施による「口腔機能の維持・回復」が主体へと移行してきているのではないでしょうか。 高齢者が通院できなくなった場合に、これまで診てきた先生が訪問診療をされないとすると、他の歯科医院に患者さんが移行することになります。歯科治療が必要な高齢者の通院が難しくなると、その患者さんは他の医院が診療することになるという体制では、先細りは確実です。 歯科訪問診療を難しく考えずに、まずこれまで医院で行っていた診療を、「場所を変えて」「内容もできる範囲で」行うという考え方を取り入れることで、それほど新しい機器や器材を購入することもなくはじめられるのではないでしょうか。タービンやバキュームが付属する100万円程度のポータブルユニットが無くても、義歯の調整やグラグラの歯の抜歯などの治療は行えます。 また、訪問診療において「歯科初診料」や「歯科再診料」の代わりに算定できる「歯科訪問診療料」は、医院で診療しているよりも何倍も点数が高く、診療内容によっては外来診療よりも点数加算があるものが多くあります(92、93頁参照)。自院のお昼休みや、その時間帯の前後、また休診日などに対応するようにすれば、診療患者数を減らすことなく対応することも可能です。 まずは、歯科医師1人でも可能な治療からはじめてみるのはいかがでしょうか。1第章歯科訪問診療の敷居を下げるそこが知りたいQ&A~押さえておきたい基礎知識と準備事項~歯科訪問診療を行うとしても、せいぜい月に1~2人くらいの訪問先しかないと思うが、はじめるべき?Q1歯科訪問診療の実施状況10.00.020.030.040.050.060.00.02.04.06.08.010.012.014.016.010.012.315.116.226.235.310.413.652.12.94.36.37.98.4(医療施設調査)(件)(%)注:平成23年は宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県の全域を除いて算出 平成11年平成14年平成17年平成20年平成23年平成26年平成29年1医療機関あたり実施件数(居宅)訪問診療(居宅)を実施訪問診療(施設)を実施1医療機関あたり実施件数(施設)13.513.012.212.113.813.814.615.013.712.910.110.88.77.5令和元年11月6日付 厚生労働省「中央社会保険医療協議会」資料より・ 患者の自宅等(居宅)において歯科訪問診療を提供している歯科診療所の割合は微増傾向にある。・ 特別養護老人ホーム等の施設において歯科訪問診療を実施している歯科診療所は、年々増加しており、平成29年の調査では居宅で歯科訪問診療を実施している歯科診療所よりも多くなっている。・ 1歯科診療所あたりの歯科訪問診療の実施件数(各年9月分)は年々増加しており、とくに施設における実施件数の増加が顕著である。高齢の来院患者さんについて、今後通院できなくなった場合に継続して訪問診療で対応していくことは、医院運営上も不可欠になると思われますA

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