歯の外傷で小児が来院したら
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12PART 1歯と口の外傷の小児が来院したら? 「創傷」とは,組織の連続性の断裂であり,創傷治癒の目的は,創傷辺縁の連続性を回復し,組織機能を回復することである.破壊された組織は,回復をめざした一連の機転を開始する.すなわち,炎症と,これに続く肉芽形成である.再生 破壊された組織の構造や機能を完全に回復する過程.修復 固有構造や機能の回復はないものの,破壊されたり喪失した組織の連続性を,新生組織によって回復する生物学的過程.FIG 1 歯冠破折に併発する歯冠の亀裂(不完全破折).創傷後の反応(TABLE 1)外傷による各組織の,損傷と組織反応の特徴TABLE 1 受傷後の反応.口腔外傷の損傷,治癒,その特徴 独特な特徴をもつ外傷の損傷を治療するためには,“敵を知る”病理の理解が重要である.外傷の治癒過程の理解を促し,診査や治療の理解のために,外傷の病理をあらためてまとめてみた.▲外力を受けたことにより生じるエナメル質の「亀裂」や「破折」は,象牙質や歯髄に物理・化学的刺激や細菌感染をもたらす危険性をもつ1.▲同様に危険なのは「エナメル質形成不全」部である.エナメル質形成不全とは,エナメル質の形成過程で,エナメル芽細胞と退縮エナメル上皮が外傷や感染によって,エナメル質基質形成と二次的石灰化を停止することによる実質欠損である.乳歯が外傷を受けた場合にも,永久歯にエナメル質形成不全が起きることがある.①エナメル質の損傷と組織反応(FIG 1)a①出血は血管収縮と血液凝固によって制御される.②炎症反応にともない,白血球は創内を浄化し,感染に対する防衛線を確立する.③壊死した組織片,細菌,異物が除去される.④組織の遊走と増殖により欠損が補充され,新生結合組織と上皮により創が閉鎖される.⑤組織の再構成が,「リモデリング」「一次的に創傷部に生じた組織の,機能的に適した組織への修整」の順で起きる.CHAPTER 2

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