別冊 QDT ジャパニーズ エステティック デンティストリー 2021
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27THE JAPANESE JOURNAL OF ESTHETIC DENTISTRYISSUE 2021Push the limits 今日のCAD/CAMテクノロジーは創成期のシステムとは大きな違いがある。創成期のシステムでのスキャン方法は、大別すると接触タイプと光学タイプに分かれていた。 前者の接触タイプでは、スキャン対象物の表面を移動するプローブの接触情報をCAMの動きに合わせた点に分解し、その点と点を線で結び立体データを製作していた。すなわち座標点を立体的に構築していた。 一方の光学タイプでは、経線状(縞模様)の光を対象物に照射し、規格化した立体データに合わせて座標点を組み合わせることによりデータを作成していた。 そして、いつしか歯科用CAD/CAMでは光学タイプが主流となり、飛躍的に進化を遂げることになった。その立役者はデジタルカメラを代表とした撮影データ取得の高精細化と高速化、そして撮影法(スキャニング)の改良による精度の向上であろう1,2。 しかしながら、いかにスキャニング精度が向上しても、実際には加工をするための加工機との兼ね合いから、データそのままの形態を立体化することはできない。加工機の機械的な精度や加工用バーのサイズ、さらにはCAMソフトが生成する加工パスなどの要因により、制限が加わってしまうのが現実である。 2019年、CERECシステム(デンツプライシロナ)では、これまでの蓄積された膨大な経験を基に、これまでの光学式・目的 光学スキャナーで生じるエッジロス(被測定物の縁端部データの欠落)は、一般的にCAD/CAMで製作した修復装置に浮き上がりを生じさせ、それをラボサイドまたは、チェアサイドにて手作業で調整する必要があった(Fig 1)。しかし、近年はCAD/CAMのハードウェアおよびソフトウェアの発展により支台歯形成やスキャニングなどのチェアサイド優先タイプのスキャナーからカメラタイプの新しいスキャナーを開発することによりさらなる精度の向上が行われた。これにともないCAMソフトウェアの改良を行い従来よりも非常に高い加工精度と高速化を実現した。もちろん、他社のソフトウェアや加工デバイスも進化していることは筆者らも理解している。 とはいえ、いかにソフトウェアや加工機が進化しても、そのベースとなる支台歯形成をどのようにCAD/CAMにすり合わせるのかという課題は残されている。 これまでの補綴・修復装置製作で主流となってきたロストワックス法は、すべての工程に経験に基づいた人の手が介入することで、「不可能を可能とする手技と技法」が確立されていた。しかしながらCAD/CAMには、こうした「不可能を可能とする手技と技法」は存在しない。このことにより、ロストワックス法とCAD/CAM法の間には適合性や最低厚みの点で大きな違いが生じてきた。 これを踏まえ、本稿では最新のCAD/CAMシステムの限界を再考し、その限界点を超えるための、よりCAD/CAMに適した支台歯形態をラミネートベニアを例にして考察していく。現在不可能と思われる限界を超えるための支台歯形成、スキャニング、設計などの各ステップを再考および検証し、その限界点を探ってみた。のプロトコールを適切に行うことにより、エッジロスによるマージン部の不適合をかなり防ぐことができるようになってきている3,4。それではこのエッジロスを少なくするための支台歯形成とはどのようなものであろうか? 支台歯のスキャニングにおいて、フィニッシュラインの縁端部に生じるエッジロスを避けるためには、理論上はエッジを可及的になくすことで避けられると考えられる(Fig 2)。はじめにエッジロスの影響を可及的に避けるためのラミネートベニアの支台歯形成

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