OJのスペシャリストたちがおくる インプラント 基本の「き」
1/7

141歯科における「インプラント」 一般的にインプラントは、骨折やリウマチなどの治療において、骨を固定し、補強することを目的として、生体内部に埋め込まれる器具の総称です。最近では心臓ペースメーカーのように電力が必要なものや、美容目的のものなどもありますが、超高齢社会における問題の一つである、加齢よる骨の脆弱化に対し整形外科分野で広く応用されています。歯科においては、失われた歯根の代替えとして顎骨に埋め込む人工歯根を「デンタルインプラント」と言い、本書ではこれを「インプラント」と統一して表記します。 インプラントの歴史 歯科におけるインプラントの歴史は古く、5,500年前のエジプトまで遡ることができます1)。ヨーロッパでは上顎に鉄製のインプラントが埋まっている古代ローマ時代(3世紀頃)の人骨が発見されたことが、論文誌「Nature」に報告されています2)。1900年の初頭には、骨内に埋入したインプラントを土台にして義歯を入れる術式が報告されています3)。その後もさまざまな治療術式が考案されてきましたが、良好な長期予後を得るには至らず、人類が現在の治療スタイルを獲得するには1960年代まで待たなければなりませんでした。 1952年、スウェーデンの Brånemark4)が、「骨内に埋め込まれたインプラント体が光学顕微鏡レベルで直接的に骨と接触する現象」を発見し、それをオッセオインテグレーション(osseointegration;「osseo=骨」と「integration=統合」を組み合わせたBrånemarkの造語)と定義付けました。インプラント治療はこの原理に基づき、顎骨に埋入されたインプラントが感染や拒絶反応を起こすことなく咬合力に耐えうるという概念のうえに成立している治療法なのです。インプラントの基礎知識1CHAPTER表1 AlbrektssonとFroumによるインプラントの条件インプラントに関するさまざまな技術革新や治療法の開発は進んできたが、約40年が経過した現在においてもいまだ7つ目といえる条件は見当たらない。インプラント治療はそのコンセプトが確立してかなりの年月が経っていると言える。a:Albrektsson(1981年)によるインプラントを成功に導く基本的なキーポイント①生体親和性(Biocompatibility)②インプラント体のデザイン(Implant Design)③表面性状(Implant Surface)④顎骨の状態(State of Host Bed)⑤外科手技(Surgical Technique)⑥咬合負荷(Loading Condition)b:Froum(2005年)によるデザインから考えるインプラントの選択①テーパードデザイン(Tapered Design)②セルフタッピング(Self Tapping)③インターナルコネクション(Interanal connection)④フルラフサーフェス/カラーのみ機械研磨(Full rough/Machined collar)⑤生物活性型表面処理(Bio-Active surface)オッセオインテグレーションを促進するための表面性状、コンピュータ支援システム(ガイデッドサージェリー)によるインプラント外科、各種骨増生法、即時荷重または早期荷重といった最新の材料・技術を含むすべてが包括されており、新しい要素は現在でも見当たらない。今から15年前にすでに現在市場に出回っている商品をイメージできていたことになる。

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る