増補新版 Minimal Tooth Movement
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図5kk〜nn 歯肉のトリミングの外科的術式の要点(他症例を利用).歯の挺出が終了した直後に,歯肉のトリミングに移行する.麻酔後,メスを用いて内斜切開で反対側の歯頸ラインと対称的な形態に歯肉をくり抜く(kk〜mm).このときに歯間乳頭はできるだけ触らず保存するように注意を払う.同様に,口蓋側の歯肉をトリミングする(nn).メスの代わりに電気メスを使ってトリミングしてもよい.電気メスを使う場合はgin-givectomyに準じて外斜切開とする.クスレッドがスムーズに通るような溝を形成する. つぎにアンカーワイヤーを装着する(図5s).アンカーワイヤーは咬合のじゃまをしない範囲でできるだけ切端寄りに付けるのがよい.理由は,フックとワイヤー間の距離を長くとることにより,対象歯を挺出させる量を確保することができるからである.通常,フックの先端と固定源ワイヤー間の距離は3mm以上を確保したい.また,アンカーワイヤーが斜めに装着された場合は,レジン玉をワイヤーに付与し,歯の挺出の方向を任意の向きに変えるようにする(図5t,u).e)エラスティックスレッドによる牽引 フックとアンカーワイヤーの間にエラスティックスレッドをかけて対象歯に挺出力を加える(図5u).MTMで行う矯正的挺出では,急速挺出である.以前はスレッドを2周しか装着しなかったが,エラスティックスレッドをげんこつ2重結びで3〜4周結ぶことにより約1か月で3〜4mmの挺出が期待できる(スレッド2周巻きでは約6週間で3〜4mmの挺出).臨床経験上スレッドをきつく4周装着したとしても(数百グラムの牽引力を加えたとしても),問題にならないと考えている.エラスティックスレッドは中空になった細い透明のゴム紐で,縛ったゴムが緩むことはないのが特徴である(図5uはパワーチューブ クリア .025:カボデンタルシステムズ).f)シェルの装着 前歯の挺出を行う場合,挺出中の審美性を回復する目的で唇面シェルを装着する(図5v,w).あらかじめ作製しておいた唇面シェル(図5l)をアンカーワイヤーにスーパーボンドで固定する.シェルの基底面は歯肉辺縁および根面から約2mm離して装着する(図5v).理由は,歯の挺出にともない歯肉も歯冠側に移動してくるので,シェルの下縁と歯肉辺縁および根面との間に隙間がないと,歯は挺出してこないからである.なお,臼歯部ではあまり審美に影響しないので,患者の理解が得られればシェルを作製しない場合が多い(図11参照).g)エラスティックスレッドの交換 急速挺出の場合は,スレッドの交換は2〜3週目に行う(図5y〜gg).口腔内では,スレッドの弾力は約2〜3週間で劣化,低下するように思われる.通常MTM開始2〜3週間後に,歯根は唇面シェルの基底面に触れるぐらいまでに挺出してきている.したがって,スレッド交換に先だち,まず唇面図5kk図5ll図5mm図5nn272 骨縁上歯質を確保するためのMTM

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