増補新版 Minimal Tooth Movement
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図8c,d 左側大臼歯部口蓋側(c)と頬側(d)の口腔内写真.4つのスクリューからパワーチェーンで圧下している.対角線のスクリューを利用して,パワーチェーンを咬合面に掛ける方法でもよい.圧下の障害となる₇近心をストリップスで削合しながら圧下することが重要である.図8a 左側大臼歯部の咬合時の口腔内写真.₆が挺出し,それにともない₇が近心に移動し,軽度叢生が生じている.図8b 頬側へのスクリュー埋入後のエックス線写真.歯根接触はない.₆遠心歯頸部付近に₇の歯冠近心が位置し,圧下する際に妨げになる.図8e 治療完了時の口腔内写真.₆の圧下が達成されている.なお,対合顎堤はインプラント体の埋入処置を受けている.がない.口腔内およびエックス線所見:₇₆の挺出(図7a).上顎洞に歯根が突き出している.治療計画:₇₆の圧下.2.埋入部位の検討 Case 1とほぼ同じメカニクスを用いることとした.頬骨下稜部の骨はあまり厚くなく,歯根間にスペースがあったため,₇₆頬側において歯根間を選択し,その他はCase 1と同じスクリュー埋入部位とした.スクリューに関して,口蓋側歯槽部と₇遠心(上顎結節部)は1.6mmの直径,8.0mmの長さを,頬側歯根間は1.4mmの直径,6.0mmの長さを選択した.3.治療経過 予定部位に埋入後(図7b),1か月の安静期間をおいた.₇遠心(上顎結節部)のスクリューに動揺があったため,撤去した.₇₆を同時に圧下するため,咬合面に直径0.9mmコバルトクロム線をのせ,コンポジットレジンを用いて固定した(図7c). 3週間に1回,パワーチェーンを交換し(力は200〜300g程度),約6か月で4〜5mm圧下することができた(図7d〜g).術前よりすでに大臼歯歯根は上顎洞内へ突き出している状態だったが,圧下は順調に行われた.対合の補綴物との間にクリアランスがあるが,自然挺出によって臼歯は咬合してくると考えられる.対合歯との咬合によって保定される.3)Case 3:臼歯圧下症例(図8)1.診査・診断年齢および性別:65歳,女性.主訴:左上の歯が下に伸びている.Case 3:臼歯圧下症例図8c図8d図8a図8b1698 TADsを用いたMTM

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