Digital Dentistry YEARBOOK 2021
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33全顎歯列印象における2つの口腔内スキャニングシステムの正確性に対する異なるスキャン方法の影響 ─in vitro(生体外)研究─度については、グループMがPrimescanの最適なスキャン方法であるが、Omnicamには最適なスキャン方法はなかった。緒言 過去10年間で、コンピューター支援設計/コンピューター支援製造(CAD/CAM)システムでは、さまざまな技術に基づく口腔内スキャナー(IOS)が多く市場に登場してきた1。これらのシステムでは、支台歯の三次元(3D)画像取得に基づいて補綴装置を設計し、光造形法またはミリング法により最終補綴装置を製作する2。 現在、IOSシステムの最関心事は、正確性を向上させることである。片顎片側を含む短歯列のデジタル印象の場合、エラーのリスクは低くなるが、スキャン領域が増えると正確性に影響を受ける可能性がある3-6。スキャナーの正確性は、補綴ワークフローがますます高速になり、全顎歯列のデジタル印象を通じて多種多様な診断またはリハビリテーションオプションを実現するために重要である。 正確性には、精度と真度が含まれる(ISO5725-1)7。精度は、繰り返されるサンプル測定の相互の近似を表す。したがって、精度の高いスキャナーは、再現性が高く、または分散が少なく、一貫性のあるスキャンを示す。真度は、測定値が測定対象の実際の寸法からどの程度逸脱しているかを表す。したがって、真度の高いスキャナーは、スキャン対象の真の寸法として認識される参照に近いかもしくは等しい結果を示す8。このように、スキャナーの正確性は、歯科補綴装置の十分な適合とモデルの正しい明瞭化を確保するために不可欠である。 スキャンされる材料の種類もスキャナーの精度に大きな影響を与える9。いくつかの研究では、歯質の屈折率とは異なる屈折率の金属またはポリマー材料が使用されている10ので、これらの研究では、口腔内で使用するスキャナーの正確性に関して信頼できる情報を提供していない可能性がある11、12。 最近の研究13では、天然歯の光学的性質に近い人工歯を使用して、ハードウェアならびにソフトウェアの新しい開発を行うことにより、現在のIOSデバイスの印象正確性の大幅な改善が可能となっている。それにもかかわらず、これらのIOSデバイスのスキャン方法がデジタル印象の最終的な正確性に影響を与えるかどうか、もしそうであれば、どのスキャン方法が最適であるかはいまだ明らかではない。 本研究は、全顎歯列のデジタル印象で、現在利用できる2種類のIOSシステムの真度と精度に関してもっとも正確な結果を得られるスキャン方法を決定するために計画された。各IOSシステムの帰無仮説は、利用可能なスキャン方法間に正確性の違いはないということとした。さらに、本研究は、正確性の観点から最適のIOSシステムを決定するためにも計画された。ここでの帰無仮説は、各IOSシステムにおいて最適のスキャン方法に違いはないということとした。材料と方法 カスタムマスター模型は、次の方法で製作された。歯科用シミュレーター(Versys Flex Model;P-OclusalProdutosOdontológicos、ブラジル)の上顎12本の人工歯に対して、Rosenstielの原則15に従って、オールセラミッククラウン用に、歯肉形態に合わせた1mm幅のショルダーフィニッシュライン、テーパー6~10°、機能的な咬頭ベベル、1.5~2mmの咬合面削合;1~1.5mmの歯軸面の削合、全体的に丸みを帯びた滑らかな仕上がりなどの条件で支台歯形成を行った。左右の上顎第一大臼歯はインプラントアナログに置き換え、チタンベース(BO 4.1 L;Dentsply Sirona、ドイツ)とスキャンボディを各インプラントアナログに固定した。 Telio CAD(TC)ポリメチルメタクリレート(低半透明シェードA3、サイズB55およびA16大;Ivoclar Vivadent、リヒテンシュタイン)修復物およびインプラント修復物(左右の上顎第一大臼歯アバットメント)を製作し、それぞれの支台歯およびチタンベース上に合着した。修復物内面とチタンベース表面をバフ研磨(CoJet Sand、40μm;3M ESPE)して、セルフエッチングレジンセメント(Calibra Universal;Dentsply Sirona)を使用して合着した16(図1)。TC材料は、その屈折率(RI=1.49)がエナメル質(1.63)と象牙質(1.54)に近似しているので選択された17、18。 カスタムマスター模型の参照スキャンは、工業界の

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