セルフケア指導 脱!誤解と思い込み
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52 歯を失う二大疾患であるう蝕と歯周病は、歯に付着したプラークが原因で発生することから、予防には小窩裂溝、隣接面、歯頸部などの自浄性がはたらきにくい部位に蓄積されたプラークをしっかりと除去することが重要です。しかしながら、歯や歯列は三次元的に複雑な形態をしており、ただ漫然と歯ブラシを動かしていたのでは、口腔内の狭い部位に歯ブラシの毛先は届きません。そのため、毛先が歯面に対して直角になるように歯面にあわせて角度付けをして、歯ブラシを小刻みに動かし、1本ずつしっかりとていねいに時間をかけて磨くブラッシングテクニックの習得に重点が置かれてきました。歯科医院での保健指導では、歯ブラシのヘッドが小さく、毛丈は切りそろえられたものの方が、狭い部位にも届きやすく、毛先と歯面の角度が把握しやすいことから、このような歯ブラシが多く用いられてきました。 一方で、すべての人が歯科専門家からブラッシング指導を受けて1本ずつていねいに磨いているわけではありません。そのため、スーパーやドラッグストアなどでは、多くの人の磨き方にあわせた歯ブラシの形態、すなわち横磨きに近い方法などで磨いたときに、歯間部や小窩裂溝部に歯ブラシの毛先が届いて、プラークが除去しやすいようにヘッドや毛丈が工夫された歯ブラシなども市販されています。また、一般的な歯磨き時間で、効率的に磨けるような大きさのヘッドの歯ブラシも多く市販しています。とりわけ、欧米では、日本人より歯磨き時間が短い人が多いために、短時間で、より効率的に磨ける大きく複雑な形状を持つヘッドの歯ブラシが開発され、性能に関する研究も多数なされています。我が国においても、時間をかけたていねいな歯ブラシを日常生活で継続できる人ばかりではありません。実際に、日本では歯磨き回数は多いものの成人の約8割が歯周病となっており、磨いているのに磨けていない状態にあると予想されます。そのため、保健指導の際には多様な歯ブラシの中から、各個人のブラッシングの実態やブラッシング指導の受容性などにあわせて適切な歯ブラシを選ぶことが大切です。誤解・思い込みを生んだ背景●工夫された植毛部を持つ歯ブラシも、スキルやリスクにあわせて選択肢に入れる。現時点で言えることはここまで!歯ブラシはヘッドが小さく、毛丈は切りそろえられたものがよい解説:山岸 敦ありがちな誤解・思い込み14根拠や理論から検討すると……

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