セルフケア指導 脱!誤解と思い込み
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54〈参考文献〉1. Cugini M, Warren PR. The Oral-B CrossAction manual toothbrush: a 5-year literature review. J Can Dent Assoc 2006;72(4):323. 2. Sharma NC, Qaqish JG, Galustians HJ, King DW, Low MA, Jacobs DM, Weber DA. An advanced toothbrush with improved plaque removal ecacy. Am J Dent 2000;13(Spec No):15A-19A.3. American Dental Association. Brushing Your Teeth. https://www.mouthhealthy.org/en/az-topics/b/brushing-your-teeth(2021年1月18日アクセス).4. Creeth JE, Gallagher A, Sowinski J, Bowman J, Barrett K, Lowe S, Patel K, Bosma ML. The eect of brushing time and dentifrice on dental plaque removal in vivo. J Dent Hyg 2009;83(3):111-116.5. 遠藤眞美,山岸 敦,三上直一郎,高柳篤史,野本たかと. 中学校の口腔保健指導における歯ブラシの提案による歯肉炎予防効果-「総合的な学習の時間」を活用した参加型保健指導を通して-.日歯医療管理誌 2021;55(4).(in press)6. 高柳篤史. 歯ブラシを科学する. 日歯医師会誌 2017:70(6):469-477. 国内では、市販されている歯ブラシの比較評価の報告は少ないですが、海外の大手メーカーでは新しい技術で開発された製品を、大学や研究機関にて対抗品と性能評価を行い論文発表することが多くあります。その中でも今回取り上げたCAに関する研究は、もっとも数が多く報告されています。 この論文で着目していただきたいのは、保健指導を受けていない成人が、普段の磨き方で1分間ブラッシングしたときの評価という点です。通常歯ブラシの評価は、評価したい歯ブラシの特徴を生かせる条件で行われることが多いため、この歯ブラシによってすべての人のプラーク除去効率が高くなることを示すものになりがちですが、本論文からは、比較的短い時間で効率的に磨くことを追求した歯ブラシであることがわかります。歯科医療者から考えれば、1分間はとても短い時間のように思われる人も多いと思いますが、1分間という時間は日常生活でのブラッシングで、決して短いわけではありません。 米国歯科医師会が推奨する歯磨きは1日2回・2分間としています3。しかしながら、米国の研究では、指導を受けていない一般集団のブラッシング時間は約45秒と報告されており、これを2分間に時間を延ばすことができれば歯周病予防に効果的であるとされています4。これにあわせて欧米では、2分間もしくはそれより短い時間のブラッシングで性能を発揮できるように歯ブラシの開発が行われているのが実情です。 一方、日本人の日常のブラッシング時間を調べた調査では、平均ブラッシング時間は、2分未満であったことが報告されており、時間をかけたていねいなブラッシングを日常生活で継続できる人ばかりではありません。 我が国においても、短時間で効率的に磨けるような工夫がされている歯ブラシ、歯面に対する角度付けをしなくても、歯間部に毛先が届きやすくなるよう工夫された歯ブラシなど、多様な歯ブラシが市販され、開発され続けています。中学生の昼の歯磨きで、毛丈や毛束の形状が工夫された段差植毛の歯ブラシを使用したことで、集団の歯肉の状態に改善が認られた報告もあります5。 これらのことから、ブラッシング指導においても、一律に理想的なブラッシングを日常生活で継続することを前提として歯ブラシを選択するのではなく、さまざまな歯ブラシの性能特徴を把握したうえで各個人の口腔内状況、ブラッシング習慣、保健指導の受容状況、あるいは集団特性にあわせて適切な大きさや形態の歯ブラシを選択することが大切です6。この論文やその他の論文から言えること世界の歯ブラシ日本米国欧州中国北欧日本の歯ブラシのヘッドの長さは約2cm

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