セルフケア指導 脱!誤解と思い込み
5/7

59理解を助けるこの図表をCHECK!この論文をCHECK! ─根拠に基づくアプローチのために─目的 歯ブラシ線維の先端を使用して刷掃する代表的なブラッシング法であるスクラッビングについて、歯ブラシ線維の損耗がブラッシング時の歯磨き圧およびプラーク除去効果にどのような影響を及ぼすかを、in vivoおよびin vitroの両面から検討した。方法 in vivo実験では4週間の間スクラッビング法を被検者に行わせ、歯磨き圧、歯ブラシの毛の広がり、座屈強度を1週間ごとに計測した。 in vitro実験では、メタリックプレートにゴールドコーティングして独自の実験的プラークを作成し、ブラッシングマシンでスクラッビング法と同じブラッシング動作を行い、歯ブラシ線維の損耗がプラーク除去効果にどのような影響を及ぼすのかについてより客観的に評価した。結果および結論 in vivo実験では、歯ブラシを頻回使用しても、歯ブラシ線維束はそれほど広がるものではなかった。しかし、歯ブラシ線維の断端部の形態変化については、歯磨き圧の小さい被検者では4週間使用すると断端面の一側が外側にわずかに広がってくる傾向が認められた。歯磨き圧の大きい被検者では、歯ブラシ線維の体部にかなり顕著な損耗が認められ、使用前のラウンドカットとはほど遠い像を呈するようになった。 歯ブラシの線維の硬度は、経週的に減少した。そして、この減少傾向は歯磨き圧の大きい被検者では大きく、圧の小さい被検者では小さいことが確認できた。歯磨き圧と歯ブラシ線維の硬度との間には統計的に有意な関係が認められた。in vitro実験でも、歯磨き圧に大きな影響を及ぼすと考えられる歯ブラシ線維の硬度は、in vivoの実験の場合と同様にストローク数の増加につれて低下した。この低下傾向は使用圧が大きいほど著明であった。実験的プラークの除去効果を測定した結果では、使用圧が高い方が、そして新しい歯ブラシの方が除去効果が統計学的に有意に高いことがわかった。 以上、歯磨きによって歯ブラシ線維が損耗される諸因子のうち、特に歯ブラシ線維の硬度および歯磨き圧の両因子がプラーク除去効果に大きな影響を及ぼすことがより客観的に立証することができた。 これらの結果より、特にプラーク除去効果の面から、スクラッビング法によるブラッシングにおいては、歯ブラシは4週間用いたら新しいものと交換すべきであると結論付けた。Scrubbing法における歯ブラシ線維の損耗に関する研究―とくに歯みがき圧を考慮して―. (稲田芳樹. 日歯周病会誌 1985;27(2):352-368.)歯ブラシを使用すると、使用期間の長さに比例して毛の硬度が低下(劣化)する。硬度の低下にともない歯磨き圧が増加する。筆者の予想ではあるが、毛が軟化すると磨きごたえが低下するため、圧が増加するのではと思われる。被験者Aの硬度被験者Cの硬度被験者Bの硬度被験者Dの硬度被験者A~Dの平均硬度被験者A~Dの平均歯磨き圧10.09.07.08.00週3週2週4週1週歯ブラシ線維の硬度(kg/cm2)500400200300平均歯磨き圧(g)

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る