セルフケア指導 脱!誤解と思い込み
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60〈参考文献〉1. Van Leeuwen MPC, Van der Weijden FA, Slot DE, Rosema MAM. Toothbrush wear in relation to toothbrushing effectiveness. Int J Dent Hyg 2019;17(1):77-84.2. 神田隆行, 大森みさき, 長谷川 明. 歯周疾患 (慢性辺縁性歯周炎) 患者の初診時診査項目に関する検討―5年後の推移―. 日歯周病会誌 1993;35(1):145-156.3. 高梨 登, 寺本 幸代, 水谷 智宏, 坂井 俊弘, 望月 兵衛. 学童期の生活習慣と歯・口の健康―齲蝕発生要因およびカリオスタット®との関連―. 小児歯誌 2006;44(4):581-590.4. 土肥義則. 血液型で見る、歯ブラシ1本の交換期間. ITmediaビジネスONLiNE. https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/0811/11/news053.html(2020年12月1日アクセス).5. 稲田芳樹. Scrubbing法における歯ブラシ線維の損耗に関する研究―とくに歯みがき圧を考慮して―. 日歯周病会誌 1985;27(2):352-368.6. 高柳篤史. 歯ブラシの毛先. 歯科学報 2014;114(1):27-29. 紹介した論文では、歯ブラシは広がったように見えなくても、使用頻度と歯磨き圧に比例し毛の硬度(強度)が低下し、同時にプラーク除去効果(清掃性)が低下することが示されており、推奨する交換サイクルは1ヵ月としています。歯ブラシの損耗に関しては、この論文でも証明されているように、強い力が加えられるとより速く進みます。 この現象に関しては、論文というよりも材料力学で取り扱う片梁モデルが、その性質を普遍的に示していると言えます。理論や数式は理解するのが困難かもしれませんが、より大きな力を加えると大きなたわみが生じ、これを繰り返すことにより材料は劣化していきます(図1)。さらに、毛の長さが長いほど(長さの3乗に比例)、毛が細いほど(半径の4乗に比例)、たわみは大きくなります。したがって、力が強いほど、毛の長さが長いほど、毛が細いほど劣化が進みやすいことになります。また、植毛密度とヘッドの大きさを考えると、植毛密度が高いほど、ヘッドが大きいほど1本の毛にかかる力が分散するため劣化が起こりにくいと言えます。 本論文の対象はラウンド加工された円柱状のブリッスルですが、最近は極細毛の歯ブラシも多く、1993年に初の製品が発売されて以来普及が進んでいます。極細毛は1本のブリッスルが円錐状になっており、先端ほど細くなります。したがって、力を加えた場合先端ほど大きく変形し、容易に弾性限(元の形に戻る限度)を超えることが予測されます。実際に1ヵ月使用後の歯ブラシを観察した場合、外観上の変化はほとんど認められませんが、毛先を拡大すると大きく変形しているのがわかります(図2)。これは理論で説明されるように、毛先のみ弾性限を超え延性変形(元の形に戻らない変形)を起こしていると考えることができます。 前ページの論文では、歯ブラシの交換時期は硬めのラウンド毛でも1ヵ月を推奨していますが、力がより強い場合、極細毛をはじめとする細い毛などで劣化を考慮する必要がある場合は、使用歯ブラシやブラッシング行動を確認したうえで、柔軟に交換時期をアドバイスすることが望ましいと思われます。この論文やその他の論文から言えること図2 1ヵ月使用後の極細毛の歯ブラシヘッド部の外観先端拡大図外観上の変化はほとんど認められないが、毛先を拡大すると大きく変形している。図1 材料力学――たわみ方の違い長いほどたわみが大きい力が大きいほどがたわみが大きい細いほどたわみが大きい円柱よりも円錐の方が先端のたわみが大きいもとの状態荷重後の状態力力力力力力力力

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