一般臨床家、口腔外科医のための口腔外科ハンドマニュアル’21
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歯科・口腔外科におけるエアロゾル飛散の実態とその対応SPECIAL FEATURE診療内容使用器具検査対象距離血液エアロゾルの付着検出率文献下顎埋伏智歯抜歯(立位)エアーモーター・タービンガウン,フェイスシールド(図5)術野に近接88%13下顎埋伏智歯抜歯(座位)エンジン・タービンフェイスシールド術野に近接80%14エンジン・5倍速ハンドピース49%クラウン歯冠形成タービン頭側1mに設置した口腔外バキュームのフィルター(図7,8)術野から頭側1m48%192級インレー形成タービン29%スケーリング超音波スケーラー12%下顎埋伏智歯抜歯エンジン・タービン90%エンジン・タービン・口腔外バキューム併用(術野近傍設置)(図9)60%表2 歯科治療時の血液エアロゾルの飛散.と80%であった曝露率は57%になった(図6).アシスタントスキル(臨床経験年数)別でも,埋伏智歯の程度(Winters分類)でも曝露率に差はなかった.歯冠形成,歯石除去でも血液飛沫曝露があるため,超音波器具,高速回転切削器具を使用するすべての症例で,飛沫感染対策が必要ということである.飛沫に含まれるSARS-CoV-2ウイルスの量や,どの程度の飛沫量でCOVID-19感染が成立するのかは不明である.飛沫の検知から飛沫粒径,濃度等の計測,定量化した調査や,直接の飛沫感染対策として有用な遮蔽板(患者の口と術者,助手の間の透明な仕切り等)の設計等これからの研究が望まれるところである.COVID-19の空気感染について 飛沫対策は病院に限らず市中の店舗でも透明のビニールカーテンや卓上のパーティション設置等,早い段階から対策が取られた.エアロゾルは空気中に一定時間浮遊するため,その対策として換気が重要であることはよく知られている.WHO(World Health Organization:世界保健機関)はCOVID-19の感染経路は接触感染と飛沫による飛沫感染で,空気感染しない,と当初発表していた.しかし,2020年7月7日には空気感染の可能性も否定できないと見解を更新し,同年10月15日にはCDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国疾病管理予防センター)が密閉された空間などの条件がそろえば空気感染もありうると公表した.したがって,歯科診療における潜在的なCOVID-19無症状陽性者に対する感染対策はエアロゾル対策も講じる必要がある.エアロゾルは目に見えないため,発生の要因や飛散,拡散の性質,動態を把握しておくことが対策を講じるうえで重要である.図6 改良した吸引嘴管.吸引嘴管が頬粘膜や舌を吸引してしまい,吸引できない短い間に飛沫,エアロゾルが発生していると考え,吸い付き防止に1mm径の細孔を3個120°間隔で付与した.25

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